2021/02/01【三山春秋】芥川龍之介の『桃太郎』は…
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 ▼芥川龍之介の『桃太郎』はよく知る昔話とは違う。桃太郎が征伐を思い立ったのは畑仕事に出るのが嫌だったから。桃太郎に愛想を尽かした老夫婦は一刻も早く家を出てもらいたがった

 ▼鬼ケ島は〈天然の楽土〉だった。鬼は平和を愛し、琴を奏でて踊る。そこに桃太郎がやって来て〈一匹も残らず殺してしまえ!〉。鬼にしてみれば桃太郎が鬼なのだ
 
 ▼日本を代表する鬼と言えば「酒呑童子しゅてんどうじ」だろう。京都の大江山に立てこもったが、勅命を受けた源頼光らによって毒入りの酒を飲まされ、首をはねられた。最期の言葉は「鬼に横道おうどうなきものを」。横道とは正しい道に外れたことで、だまし討ちを非難した

 ▼『鬼滅きめつやいば』の大ヒットで近年これほど鬼に注目が集まったことはない。主人公・竈門炭治郎かまどたんじろうのひたむきな姿と「心はどこまでも強くなれる?」といった数々の名せりふが共感を呼んだ

 ▼あすは節分。地球の公転の関係で124年ぶりに2月2日になった。例年以上に楽しみにしている子どもが多いに違いない

 ▼藤岡市鬼石の「鬼恋節分祭」は毎年、「鬼は内」の掛け声とともに全国の節分で追い出された鬼を迎えてきた。だが今年はコロナ禍で中止。逃げ場を失った鬼はどこへ行くのだろう。炭治郎なら「今度生まれてくる時は鬼になんてなりませんように」と抱きしめてくれるのだが。

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