2021/04/22【三山春秋】東京電力福島第1原発がある…
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 ▼東京電力福島第1原発がある福島県双葉町と大熊町は2013年12月、除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設の設置を国に要請された。汚染土を入れた黒い袋があるだけで復興は遅れ、風評で物が売れなくなる。双葉町の伊沢史朗町長は悩んだ

 ▼大熊町長と話し合った。「どうすっぺな。おれらが受けねばならねえんだか」。両町とも全町避難を命じられ、住民が周辺自治体の世話になっていた。「復興のためどこかが犠牲にならないと。われわれが判断しなかったら福島は絶対復興できないべな」。苦渋の決断だった

 ▼第1原発で増え続ける処理水を巡り、政府が2年後をめどに海洋放出することを決定した。菅義偉首相は「風評払拭(ふっしょく)に向けあらゆる対策を行う」と表明したが、漁業者は反発している

 ▼処理水は高濃度の放射性物質で汚染された水を特殊な除去装置で浄化したもの。トリチウムだけは除去できない。人体への影響は少ないとされるが、生態系への悪影響を懸念する声がある

 ▼沿岸漁業は本格操業に向けて動きだしたばかり。関係者は「風評に悩まされた10年間に積み重ねてきた努力が無駄になる」と訴える。原発事故では本県も風評被害にさらされた。漁業者の気持ちは分かる

 ▼処理水の問題は漁業者と立地自治体の意見が真っ向から対立する難題だ。筆者は昨年、町長や漁業者から直接話を聞いただけに、言葉が重く胸に残る。

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