2021/4/26【三山春秋】進学のため県外で…
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 ▼進学のため県外で1人暮らしを始める息子のスーツを買い、ネクタイの締め方を教えた。背後から手を回したり、隣に並んで締める動作を繰り返したり。父親として教えてやれるのはこんなことくらい。一緒に暮らすことはもうないのかもしれない

 ▼引っ越しで荷物を送り出すと、急に家が広くなった。冷蔵庫に隙間ができ、洗濯物が減った。乱雑だった机はきれいに片付き、部屋は抜け殻のようにがらんとしている

 ▼「空の巣症候群」という言葉がある。子どもが成長し、親元を巣立っていくことを待ち望んでいたのに、いざそのときが来たら言いようのない寂しさで無気力になってしまうことを指す

 ▼そういえば最近、わが家の事情を知る高齢のご近所さんから「寂しくなったでしょう」と何度も言われた。いずれも子育て、孫育てを終え、“空の巣”を経験した人たちだ

 ▼自分のことより子どもや家族を優先してきた女性に症状が現れやすく、医学的には一過性のうつ状態らしい。回復には夢中になれる趣味を見つけたり、支え合える夫婦関係が大事という

 ▼〈今にして知りて悲しむ父母がわれにしまししその片おもひ〉窪田空穂。時代は変われど、子どもを思う親の気持ちは変わらない。「親の心子知らず」という言葉に対し、「子の心親知らず」という言葉もあるそうだ。親子関係は年齢とともに変化する。筆者にはまず子離れが必要なようだ。

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