2021/04/30【三山春秋】下仁田町から内山峠を越え…
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 ▼下仁田町から内山峠を越え、長野県佐久市へ向かった。峠を過ぎると現れるのが「渋沢青淵の碑」。NHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」のタイトルの元となった渋沢栄一の漢詩が刻まれている

 ▼由来の部分を現代語訳すると「勢いは青天を突きさすようで、うでまくりして登り、気持ちは白雲を貫き通すようで、手に唾をして行く」となる。当時18歳。どんな困難にも負けず突き進もうという意気込みが伝わる

 ▼佐久は鯉(こい)料理で有名だ。江戸時代後期から田んぼで稲を育てながら飼う習慣があり、養蚕が盛んになると餌となるサナギが大量に出回って養殖業が発展した

 ▼鯉こく、あらい、うま煮とさまざまな食べ方がある。長野県水産試験場によると、おいしさの秘密は千曲川の冷たい水。出荷1年半前から川の水を流した池で飼うことによって泥臭さが抜け、身が引き締まる

 ▼栄養豊富で昔は病人に体力を付けさせるため食べさせた。渋沢の好物は鯉こく。親戚関係にある境島村の田島武平家では、渋沢が武平の追悼文『出がら繭の記』を書いてくれた礼として、利根川の鯉を届けている

 ▼渋沢は青年時代、家業の藍玉を売るため上州や信州を旅した。上州の山々は険しく、徒歩での峠越えは容易でなかったろう。詩は「長く吟じれば谷がそれに応じる、風は落ち葉を巻き上げて、山全体が鳴り響く」と結ばれる。詠んだのは旧暦10月、紅葉の美しい頃だった。

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