2021/06/18【三山春秋】前橋の書家、北爪隆さんが…
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ▼前橋の書家、北爪隆さんが70歳で亡くなったのは16年前のことだった。時を経て、親しくしていた人たちの手で、故人の書作品をまとめた冊子『北爪隆のめざしたもの-書家として教師として』が発行された

 ▼人一倍努力して成果を残しながら名利を求めない生き方をした人物に強く引かれる。同書で紹介される北爪さんの足跡に胸を打たれるのは、肩書や権威とは無縁の姿勢が伝わってくるからだろう

 ▼高校教師として国語や書道を指導しながら、30年以上にわたり群馬教育書道展の運営と改革に力を尽くした。流派を超えた実験的な書道展を知人たちと仕掛けたり、淡彩画家や抽象画家との共同作品展などを開催

 ▼日常生活に溶け込んだ書を理想とし、書の普及と、芸術としての新たな可能性を追求し続けた。一方で、全く分野の異なる アマチュア合唱団「前橋第九合唱団」の運営責任者として、精力的に活動した

 ▼煩雑な作業も率先して引き受け、数々の事業に貢献しながら、自身は結社などに所属することなく、孤高の立場を貫いた。共同展を行ったことがある前橋の画家、酒井重良さんは、北爪さんから教えられたことを こう表現した

 ▼〈社会においては、見返りを求めることなく、人々のために尽くす。表現においては、既成の枠にとらわれず、より自由であること〉だと。北爪さんがめざしたものは、今も私たちの心を揺さぶり続ける。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事