2021/07/05【三山春秋】退場を促す照明が灯っても…
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 ▼退場を促す照明が灯っても聴衆は誰も立ち上がらなかった。先月26日に高崎芸術劇場で開かれた群馬交響楽団の定期演奏会。会場の拍手はこの日を最後に退団する1人の楽団員のために鳴り続けていた。フルート首席奏者のパヴェル・フォルティンさんである

 ▼チェコで生まれ、音楽教師をしていた父の影響で4歳からピアノを始めた。だが「じっと座っているのが苦手」。8歳からフルートに切り替え、本格的なレッスンを受けた

 ▼ロシア語をはじめ7カ国語を操る。音楽大に在学中、併設する言語学校が日本語の授業を始めることを知り、飛びついた。「日本のことは全く知らなかったが、今思えば神様からのサインだった」

 ▼卒業後、チェコフィルハーモニーやプラハ交響楽団の首席フルート奏者を務めた。海外公演を重ねるうちに、広島交響楽団の特別客演首席奏者に招かれた。その後、3年間の群響客演奏者を経て正式に入団。在籍は23年間に及んだ

 ▼長く暮らした高崎でのお気に入りは白衣大観音。自宅から山頂まで歩き、観音像の傍で鳥の声を聞きながら市街地を眺めるのが好きだった

 ▼最後の定演を終えた後、楽団員が去ったステージでバッハの「マタイ受難曲 第49曲アリア」を奏でた。演奏が終わるとひときわ大きな拍手がパヴェルさんを包んだ。今後は日本とチェコを行き来しながら、世界の音楽仲間と演奏活動を行うという。

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