2021/07/23【三山春秋】「世界中の青空を全部東京に…
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 ▼「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような素晴らしい秋日和でございます」。1964年10月10日に行われた東京五輪開会式はこの第一声で始まった

 ▼国民は高揚感に包まれていた。翌日の上毛新聞は高々とトーチを掲げる聖火ランナーと聖火台の写真を大きく掲載。〈秋空に燃える聖なる火/世紀の祭典に世界の目〉と伝えている

 ▼歌人の土屋文明を顧問に迎えて編さんした『昭和万葉集』は東京五輪を詠んだ歌を収める。〈戦場にかつて対峙(たいじ)せし旗もあらん今揃(そろ)い進む九十四ケ国旗〉松井克巳。終戦から19年、五輪は復興した日本の姿を世界に示す祭典だった

 ▼新型コロナで延期となった東京五輪がきょう、開会式を迎える。東京都に4回目の緊急事態宣言が発令され、競技会場はほとんどが無観客に。歴史の中でも異例ずくめの大会になる

 ▼思えば招致決定から次々と問題が噴出した。斬新な国立競技場は総工費が膨らみ白紙に。公式エンブレムは盗作の指摘を受けて撤回された。2月には組織委の森喜朗会長が女性蔑視発言で辞任。開会式直前になって楽曲担当の小山田圭吾さんが辞任、演出の小林賢太郎さんが解任された

 ▼東日本大震災からの復興五輪という旗は色あせ、菅義偉首相が言う「コロナに打ち勝った証し」にはほど遠い。それでも開催へと進んだ東京五輪。今夜ともる聖火の向こうにわれわれは何を見るのだろう。

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