2021/07/25【三山春秋】2012年ロンドン五輪の…
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 ▼2012年ロンドン五輪の男子マラソンに出場したグオル・マリアルさんは「祖国では危険から逃げるとき以外、走りたいと思ったことはない」と語っている。祖国とはこの前年に誕生した南スーダンだ

 ▼泥沼の内戦できょうだい8人を失い、武装組織に誘拐され、命懸けで走って逃げた。難民として渡った米国で教師に説得され、逃げるためでなく自分の意志で走り始める

 ▼11年の初マラソンで五輪参加標準記録を突破したが、国内五輪委員会がなく、ロンドンは特別措置として個人参加。次のリオで念願の代表となる。不屈の姿を記録したドキュメンタリー映画『戦火のランナー』が話題となった

 ▼祖国のために、と今も走り続けるが東京五輪はけがで断念した。希望をつないだのが前橋市で長期合宿する南スーダンの陸上選手。男子1500メートルのグエム・アブラハム、女子200メートルのモリス・ルシア両選手が出場を決めた

 ▼1年8カ月に及んだ異国生活に不安もあったろう。ボランティアや市関係者の献身と交流した市民の温かな声援が支え、夢の舞台を迎えた。先日の壮行会、2人は「南スーダンと前橋のために最善を尽くす」と二つの故郷に誓った

 ▼内戦は終わったが、国は貧しく220万人以上が難民として暮らす。「平和の祭典」の尊さを誰より知る国の代表として祖国に希望の光をもたらしてほしい。前橋市民も地元選手として応援する。

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