2021/09/11【三山春秋】「大事な話がある」…
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 ▼「大事な話がある」。そう妻に言われることほど怖いことはない。熟年離婚も珍しくないご時世だ。話を聞いた瞬間、足元が崩れ落ちる気がした。「あなたは喉頭がんなの。大学病院から実家のお母さんに電話があったそうよ」

 ▼思い当たる節があった。親知らず周辺が化膿(かのう)して、1カ月ほど前に総合病院で抜歯と嚢胞(のうほう)摘出手術を受けていた。嚢胞は病理検査に回すと言われていたため、検体が大学病院に送られ、連絡が来たと家族は信じて疑わなかった

 ▼喉頭がんは男性に多く、喫煙や飲酒の習慣があると確率は増すらしい。成人してから晩酌を欠かさず、条件にピタリと合った

 ▼50歳を過ぎればどんな病気になっても不思議はないと思ってはいたが、激しく動揺した。あと何年生きられるだろう。その晩は眠れなかった

 ▼翌日、主治医に確認すると、驚いたのは主治医だった。「何かの間違いでは」と言下に否定した。そもそも喉頭がんの検査なんて行っていないという。大学病院にも問い合わせたが、どの医局からの電話なのか分からない。電話でがんを告知することはないらしい

 ▼詐欺かもしれない。そう思い始めたところ、県警の「安全・安心メール」に同じ手口が紹介されていたことが分かった。県内の特殊詐欺は昨年185件発生、被害は計4億円に上る。金銭被害こそなかったが、妻に真顔でがんを告知されたドキドキが忘れられない。

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