2021/09/17【三山春秋】司馬遼太郎の小説…
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 ▼司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』は雄藩同士の“密約”である薩長同盟を巡り、坂本龍馬が藩のプライドや利害を乗り越え、日本のために手を結ぶよう訴える姿が生き生きと描かれる。同盟成立が原動力となって幕藩体制は崩れ、時代は明治へとつながっていく

 ▼社会に大きな影響を与えた密約は、しばしばその実像や真偽がまことしやかに語られる。昭和の政局でもそうした場面があった。1970年代後半、相次いで首相の座に就いた福田赳夫、大平正芳両氏の「大福密約」である

 ▼当時の自民党は三木武夫首相の退陣を求める「三木降ろし」が本格化。後継総裁に福田氏が就くよう大平氏が推すとともに、任期を3年から2年に改め、福田氏が2年で大平氏に政権を譲ると約束したというものだ

 ▼今夏出版された『評伝福田赳夫』(岩波書店)はこの密約の存在を否定して注目されている。評伝は本県選出の衆院議員として初めて首相になった福田氏の官界、政界での実績を未公開資料を基に再検証した。遠くなる昭和史に光を当て、読み応えがある

 ▼もっとも「密約はやはりあった」との反論も報じられ、結論に至っていないようだが、さて真相はどうなのだろう

 ▼令和の政局で「菅降ろし」の末の自民党総裁選がきょう告示される。密約はないだろうが、100代目の首相の座を争うにふさわしい政策論争を期待したい。日本のために、である。

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