2021/09/21【三山春秋】赤ちょうちんと縄のれんが…
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 ▼赤ちょうちんと縄のれんが恋しい季節になった。コロナ下でなければ、仕事帰りでにぎわう居酒屋の片隅に座り、おでんや焼き鳥をさかなに喉を潤している頃である

 ▼〈けふは仲秋名月/初恋を偲(しの)ぶ夜/われら万障くりあはせ/よしの屋で独り酒をのむ〉。そう始まるのは井伏鱒二の詩「逸題」である。李白の「月下独酌」よろしく、うまそうに盃を傾ける文豪の姿が浮かぶ

 ▼よしの屋は昭和初期、東京・新橋にあった。詩は〈春さん蛸(たこ)のぶつ切りをくれえ/それも塩でくれえ/酒はあついのがよい/それから枝豆を一皿〉と続く。春さんは店主の息子。気安い呼び方からなじみの店でくつろぐ様子が伝わる

 ▼山本一太知事が医療提供体制を強化した上で、来月中旬ごろにも宿泊支援事業「愛郷ぐんまプロジェクト」や「Go To イート」を再開したい意向を表明した。ワクチン接種を証明する県独自のワクチンパス(仮称)を活用するという

 ▼飲食業や観光業にとっては朗報だろう。だが一気に人々が繰り出せば、感染の再拡大が心配だ。政府対策分科会の尾身茂会長は「ワクチン接種率が上がったからと言って、急に緩めると必ずリバウンドが来る」と警鐘を鳴らす

 ▼井伏の詩にあるように、きょうは中秋の名月。月見にかこつけて居酒屋に集い、気兼ねなく友人や同僚と酌み交わせるのはいつのことだろう。空模様とともに気がかりである。

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