2021/10/04【三山春秋】骨董(こっとう)の世界には…
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 ▼骨董(こっとう)の世界には「舞台をはる」というだましの手口がある。大きな屋敷を借り、使用人を雇って主人になりすます。舞台を整えたところで「見てほしい品物がある」と骨董商や収集家を招く

 ▼玄関脇の部屋には花生け、応接間に蒔絵(まきえ)の硯(すずり)箱。奥に行くほど素晴らしい掛け軸や屏風(びょうぶ)が飾ってある。手付金を払い、品物を受け取りに出向くと屋敷はもぬけの殻。または偽物をつかまされる

 ▼美術の世界でも贋作(がんさく)のうわさは絶えないが、まさかこれほど精巧な版画が大量に出回っていたことに驚いた。大阪の元画商と奈良の工房経営者が先月、著作権法違反の疑いで警視庁に逮捕された

 ▼詳細な作品データが記された学術書の写真をスキャナーで取り込み、パソコンの画像編集ソフトで精巧に色を再現した。「刷り師」は著名な画家から依頼されるほどの腕前。元画商は組合の専務理事を務めたこともあったという

 ▼無許可で複製されたのは平山郁夫、東山魁夷、片岡球子といった巨匠たち。家宅捜索ではピカソやシャガールら計12人の版画も押収され、鑑定を進めている

 ▼シルクロードをテーマにした平山の作品はファンが多く、高崎市役所には原画を元に作られた陶板画がある。ぶしつけにも電話で話をうかがったことがあるが、穏やかな語り口が印象的だった。美術に心血を注いだ人だっただけに、泉下でさぞや残念に思っていることだろう。

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