2018/07/22【三山春秋】古墳時代の代表的な遺物である…
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 ▼古墳時代の代表的な遺物である人物埴輪(はにわ)を見ていると、時がたつのを忘れてしまう。つくられた意図に加え、埴輪の造形そのものに私たちの心を強く引き付ける何かがあるのではないか

 ▼〈稚拙ながらにも、あふれるように感情に訴えるものをもっている〉。哲学者で日本精神史研究でも知られる和辻哲郎(1889-1960年)は人物埴輪をこうとらえる。なかでも特に重大な意味を担うのが、「眼」だという

 ▼無造作に穴を開けただけのようだが、それにより生き生きとした表情が現れるとし、次のように結論付ける。〈二つの穴は、魂の窓としての眼の役割を十分に果たしている〉(「人物埴輪の眼」)

 ▼この言葉に刺激を受け、県立歴史博物館の常設展示・東国文化展示室で、綿貫観音山古墳(高崎市)の埴輪群像の一つ、正座した少女が並ぶ「三人童女」を改めて見た

 ▼死者を悼み泣いている姿を表しているともいわれる切れ長の目は一層、神秘的に映る。今月から始まったテーマ展示「塚廻まわりの埴輪」(太田市)にある「跪坐(きざ)の男子」の表情に深い思索の跡が感じ取れた

 ▼「埴輪県群馬」をアピールするため、埴輪の人気投票を県などが始めている。関心を高める楽しい仕掛けである。これをきっかけに「魂の窓」に接し、千数百年前の人々の心の声に耳を澄ます時間を持ってみてはどうだろう。

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