2018/08/04【三山春秋】明治初期に建てられた渋川市…

 ▼明治初期に建てられた渋川市赤城町棚下の旅館「藤屋」の調査に立ち会わせてもらった。老朽化しているとは聞いていたのだが、想像以上だった

 ▼屋根に大きな穴が開き、建物はゆがんでいるようにも見える。「もう少し早く手を打っておけば、何とかなったかもしれない」。調査したものつくり大技能工芸学部の三原斉教授は残念そうに話す

 ▼足を踏み入れると普通の住宅とはどこか違った。柱が本来あるはずの位置から少しずれた位置にある。「間口を大きく取り、大勢のお客さんを迎えたかったのではないか」と三原教授

 ▼棚下地区の棚下不動尊には多くの参拝客が訪れた。藤屋開業の数年後に高崎と新潟・長岡を結ぶ「清水越新道」が開通し、交通の要衝として栄えた。藤屋に見られる工夫は、当時のにぎわいの中で生まれたものなのだろう

 ▼歴史的建造物には、地域の歴史や社会情勢が反映されている。長い年月を経ても、かつての地域の姿を雄弁に物語るのはそのためだ。藤屋にも同じことが言えると感じた

 ▼修復や保存費用がネックとなり、各地の歴史的建造物が姿を消しつつある。民間所有の建物への行政支援は難しいとされるが、建物が伝える歴史や価値は公共のものだ。保存活用により地域に新たな活力が生まれるかもしれない。可能性を秘めた建物が一つでも残ることを願う。

関連記事
特集・連載 > 三山春秋の記事