2018/08/16【三山春秋】童が遊ぶ姿を描いた作品などで知られ…

 ▼童が遊ぶ姿を描いた作品などで知られ、6月に81歳で亡くなった切り絵作家、関口コオ(本名・武井功吉)さん=群馬県高崎市=には、戦地でマラリアにかかり、日本に引き揚げた直後に亡くなったいとこがいた。幼少期の体験が平和を願う心を育み、郷愁を誘う作品の素地となったのだろう

 ▼平和への思いが直接的に表れたのが、太平洋戦争の激戦地、パラオを題材とした作品。高崎歩兵第15連隊の大隊が全滅したペリリュー島のある太平洋の国である

 ▼関口さんは戦後50年の節目を前にパラオを訪れた。当時のクニオ・ナカムラ大統領から作品を称賛され、当地の風景を切り絵にして独立2周年の記念切手にも採用された

 ▼切手には美しい青い海を描き、ヤシの実から出る芽で新しい国の誕生を表現した。アルファベットで「KIRIE」と記されている

 ▼「ナイフで描くのが切り絵。工芸でなく絵画」と唱え、切り絵の芸術的評価を高めることに力を入れた。一方で金銭的な執着は強くなく、第一人者と呼ばれるようになっても、作品を無償で譲ってしまうことがあり、周囲を嘆かせたという

 ▼色紙には「父が居(い)て 母が居て はじめて私は居ます」とよく書いた。つかの間の盆休みもそろそろ終わる。関口さんが切り絵にイメージした郷愁や平和について、思いを巡らせる休暇を過ごせただろうか。

関連記事
特集・連載 > 三山春秋の記事