2018/08/19【三山春秋】1893(明治26)年5月6日、…
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 ▼1893(明治26)年5月6日、榛名山東南麓を中心にほぼ県内全域の桑園が甚大な凍霜害に見舞われた

 ▼〈一朝にして桑葉悉ことごとく黒変し一望野に青色なくあたかも晩秋の景状を呈し(略)やむなく(初眠前後だった)蚕児は之これを川に投じ、或あるいは土中に埋め〉たという(『県蚕糸業史 上巻』)

 ▼「前代未聞の巨災」に強い衝撃を受けた養蚕農家が行ったのは、蚕を供養する蚕霊碑の建立だった。自然の脅威にさらされる養蚕農家は、蚕を守るため養蚕の神を信仰し、安全や豊蚕を祈願した

 ▼ボランティア団体「富岡製糸場世界遺産伝道師協会」が県内全域で蚕神の総合調査を行い、先月発行した報告書『群馬の蚕神』によれば、同年の凍霜害を受けて建てられた蚕霊碑(文字塔)は16件に上るという

 ▼安中市原市の絹笠神社境内にある「霜災懲毖ちょうひ之の碑」はその一つ。「懲毖」とは〈反省し慎む〉ことを意味し、〈惨状を反省し、後世に伝えるために建立された〉(報告書)という。慰霊とともに、災いを教訓としようという意図が込められたのだ

 ▼報告書には、養蚕の衰退に伴い忘れられつつあった文字塔をはじめ、石祠せきし、石像など456件の蚕神が紹介されている。一つ一つに、蚕を大切にする思い、被害を克服するための知恵が刻まれており、当時の養蚕農家の心を伝えるかけがえのない文化遺産である。

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