2018/08/26【三山春秋】ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの…  

 ▼〈ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの…〉。金沢出身の詩人、作家、室生犀星(1889~1962年)の詩で最も広く知られる「小景異情 その二」の書き出しだ

 ▼これを収めた第2詩集『抒情小曲集』が出版されたのは、今から100年前の1918(大正7)年9月のことである

 ▼覚書に〈上州前橋には三度ゆけり(略)赤城山、公園等、皆予が心に今もなほ生けり〉とあり、若き日、萩原朔太郎を頼って前橋に滞在した時に作った「前橋公園」など5編も入っている

 ▼朔太郎は序言でこう絶賛した。〈そのリズムは、過去に現はれた日本語の抒情詩の、どれにも発見することのできない鋭どさをもつて居る(略)これ以上のすぐれたものを求めることは、今後とも容易にあるまい〉。詩集は詩壇に大きな衝撃を与えたという

 ▼当時の人々はこれを手にしてどう感じたのか。手がかりを得たいと思い、復刻版(日本近代文学館刊)を開いた。これまで身近な前橋の風物などが描かれた作品に注目してしまっていたが、放浪の旅で生まれた哀切極まる詩の数々、そして装丁、デザインの質の高さに改めて驚かされた

 ▼〈私は抒情詩を愛する。わけても自分の踏み来つた郷土や、愛や感傷やを愛する〉(自序)。1世紀を経て、犀星が目指したものは、一層強い光彩を放っている。

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