2018/08/29【三山春秋】渋川市と東吾妻町を結ぶ県道…

 ▼渋川市と東吾妻町を結ぶ県道渋川東吾妻線。その金井交差点近くに、一軒の大きな住宅がある。同市出身の実業家、石田充親(みつちか)が大正末期に建てた邸宅だ

 ▼木造の粋を凝らした和風建築と知識人のステータスだった洋館が一体となった和洋併存様式。専門家は「大正末期の住宅洋風化の一過程を知ることができる」「当時の建築技術と資力がつぎ込まれた先端的な建物」と評価する

 ▼石田は上京後、水道会社や電設会社の取締役、建設会社代表を務めた。東京を拠点としていたが、大正末期から昭和初期にかけ、金井地区の井戸掘削に資金提供するなど地域の発展に貢献した

 ▼石田の没後、邸宅は旧金島村に寄贈され、金島公民館や市教育研究所として2007年まで使われた。昨年度、解体に備えて市教委が詳細な記録保存調査を実施、価値が再認識された

 ▼石田の業績や石田邸の価値が市民にあまり知られていない中、市文化財調査委員会は6月、調査報告書と保存活用を求める要望書を市に提出。石田邸の保存活用に向けた活動を始めた

 ▼同委員会の今井郁男議長は「価値ある建物を何とか残したい。地域の方々の声を聞き、活用法を考えていきたい」と話す。現在、地域の歴史や文化を物語る建築物が姿を消しつつある。そんな流れに逆らうような小さな取り組みが、大きく育つことを願う。

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