2018/09/02【三山春秋】〈魂になつてもなほ生涯の地に留まる…

 ▼〈魂になつてもなほ生涯の地に留まるといふ想像は(略)至極楽しく感じられる〉。民俗学者の柳田国男が74歳の時に発表した「魂のゆくへ」で自分の死後について触れたくだりだ。続けてこうつづる

 ▼〈文化のもう少し美しく開展し(略)学問のもう少し世の中に寄与するやうになることを、どこかさゝやかな丘の上からでも、見守つて居たいものだ〉

 ▼30年以上前のことだ。名君として知られる第5代前橋藩主、酒井忠挙ただたか(1648~1720年)の事績を知るため、前橋市紅雲町の龍海院にある「前橋藩主酒井氏歴代墓地」(市指定史跡)の中の忠挙の墓を初めて見た。その時浮かんだのが柳田の言葉だった

 ▼将来の前橋では文化活動がしっかり展開され、学問が世の中に寄与しているだろうか-。墓で見守る300年前の先人にそう問われている気がしたのだ

 ▼父、忠清の失脚で挫折を味わうが、逆境の中、文治政策を軸に藩政で優れた業績を残した。とりわけ力を入れたのは学芸の振興だった。忠挙による家訓にこんな言葉がある。「常に学問を心掛けよ。(略)名利のためにする学問は不学に劣る」

 ▼不遇な時代を生き抜いた忠挙の奮闘をテーマにした講演会が24日に龍海院である(問い合わせは市文化国際課)。現在の前橋のまちの 基礎を築いた藩主や関連史跡への関心がより高まればと願う。

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