2018/09/12【三山春秋】ガラスケース越しに見るテニスラケット…

 ▼ガラスケース越しに見るテニスラケットは木製だった。今の進歩したラケットとは異なり、重くてスピードも出ず、スピンもかかりにくかっただろう。ラケットの主は旧子持村出身の佐藤次郎(1908~34年)

 ▼102年前までさかのぼる日本のテニス四大大会シングルス初制覇への挑戦の歴史にあって忘れてはならない選手の一人だ。30年代、ウィンブルドンで2年連続準決勝進出。全仏と全豪の前身に当たる大会でも4強入りした

 ▼日本選手が上位に行くたびに「佐藤次郎以来、何年ぶり」との説明がつくことも多かった。大坂なおみ選手が全米オープン女子シングルスを制した。日本勢に立ちはだかってきた高い壁を軽々と乗り越えたように見えるほど力強いプレーぶりだった

 ▼ラケットは佐藤の出身校、渋川高校で保管されている。大坂選手の快挙後、同校を訪ねて見せてもらった。自筆の書やスケッチ、トロフィー、遠征に使ったとみられるトランクもある

 ▼大学進学後に軟式から転向して頭角を現し、世界に挑んだ心意気を感じ、今につながる功績や歴史に思いをはせた

 ▼残念ながら、後輩生徒たちが遺品を見られる機会は少なく、知名度もいまひとつと聞く。県民も同様かもしれない。26歳で海に身を投じざるを得なかった心境や時代背景とともに、もっと知っていていいと思う。

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