2018/10/12【三山春秋】かねがね不思議に思っていることで…
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 ▼かねがね不思議に思っていることで、松尾芭蕉の俳句を刻むなどした芭蕉塚が県内にはなぜか多い。実際に芭蕉が詠んだ場所はないはずなのに、都道府県別で(1)長野227基(2)群馬221基(3)埼玉116基(4)山形104基(田中昭三編著『芭蕉塚蒐』から)-と、かなりの数だ

 ▼主に江戸時代後半の建立という。最近の名所発掘ブームではないが、近隣の句碑にも関心が注がれた。幕末の頃、当時の長井小川田村(現渋川市赤城町)の医師、角田貫哉は上州一帯をくまなく調べ、104基を自著で紹介している

 ▼角田の業績に詳しい赤城町出身の元中学校長、須田昭司さんによると、養蚕業や活字文化の発展とともに俳諧が普及した。世相、文化を語るサロンができ、江戸の流行にも敏感だったとみられる

 ▼個々の趣味趣向を句碑でアピールし、建立がブームになった。今でいえば新しい文化や思潮、あるいはファッション、ゲームに胸ときめかせるようなことだろうか

 ▼赤城町の山あいに角田が建てた句碑「秋風塚」がある。〈あかあかと日は難面つれなくも秋の風〉。いつの間にか秋の装いに包まれているこの時季にふさわしい句だ

 ▼今日は1694(元禄7)年に亡くなった芭蕉の命日(芭蕉忌)にあたる。時代が変わっても、上州人には清新な詩情とでもいうか、心揺さぶる何かへの憧れのようなものがある。

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