胸突き八丁 程よく「疲れる」運動を
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 坂の程度を表現するときに「胸突き八丁」という比喩が使われます。上り坂で心臓がドキドキすることをイメージしたものと考えられ、人生のなかでの「つらい」場面、「頑張りどころ」の例えとしても使われます。

 坂の上りは自分自身の体重と荷物の重さの双方を、重力に逆らって位置エネルギーの大きい状態へと移動させる作業なので、体への負担が大きいことは容易に理解できます。

 体を鍛えるためにはあまり楽な動作では効果がないので、少し疲れるぐらいの運動強度が必要です。スポーツ選手のような厳しい練習は必要ありませんが、生活習慣病から脱却するための運動でもある程度「疲れる」運動強度は必要です。

 もちろん継続が大切なので、半年、1年と無理なく続けられる強度を探すことが必要となります。

 運動強度の指標として、自分の感じ方で表現する「自覚的運動強度:Borg Scale」というものもありますが、ある程度客観的な指標も欲しいところです。特別な道具を用いないで運動強度を推し量るには心拍数がとてもよい目安になります。

 心臓は栄養や酸素の供給需要が増加した際、1回の拍出量を増やす対応と、単位時間あたりの収縮回数を増やす対応の両者で対応します。1回拍出量の増加は最大可能な運動の40~60%程度の運動負荷で頭打ちとなるので、それ以上の心拍出量増加は回数で稼ぐことになります。

 各個人の心拍数の最大値は「最大心拍数=220-年齢」で予測されるので、年齢が上昇すると心拍出量の上限が下がってくることがわかります。若年者ではここで言う年齢は暦上の年齢と差があまりないことが多いですが、年齢を重ねるうちに暦上の年齢と生物学的年齢の差が大きくなります。

 特に病気がなく、持続的な運動習慣などの健康管理で、生物としての(肉体的な)年齢が暦の年齢よりも若く維持できている人では、この式で引くべき数値が小さくなり、最大心拍数の低下が遅れます。

 この最大心拍数の60%以上となる運動強度とか、最大心拍数からさらに年齢を引いた値の80%程度の心拍数となる運動強度などが程よい運動の目安と言われます。実際に心拍数を計りながら坂道を上ってみて、自身の感じ方と比較することで続けられそうな運動負荷が決められるでしょう。

 最近は心拍数計測機能つきの腕時計がそれほど高価でなくさまざまなデザインで市販されています。万歩計だけでなく、ご自身ならびにご家族の健康増進のためにこうした最新の健康機器を積極的に活用することを考えてみてはいかがでしょうか。



群馬大大学院医学系研究科教授 斎藤繁 前橋市古市町

 【略歴】日本山岳会群馬支部が主催する「健康登山塾」の講師を務める。著書に「病気に負けない健康登山」(山と渓谷社)など。群馬大大学院医学系研究科修了。

2019/01/01掲載

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