組織での協働性 広がれ「のりしろの心」
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 約20年前、小学校1年担任の時のことだ。廊下掃除で、1年と2年の境目の床がきれいにならないことを学級の子どもたちに相談した。すると、児童Aは「せんせい、七夕のわっかののりをつける所みたいに、1年と2年のりょうほうのおともだちが、そこをおそうじすれば、ピカピカになるよ」と応えてくれた。

 輪飾りは紙テープの端1センチ位にのり付けして丸め、輪を作る。のりしろの部分は、テープが二重となる。私は、Aから「のりしろの心」を学んだ。つまり、集団では自分の仕事だけでなく隣の仕事も理解し、必要に応じて協力することが重要だということだ。

 「のりしろの心」を小学校の校務分掌に当てはめてみる。例えば、運動会の鼓笛パレードでは、音楽主任が運動会の1年前から楽器演奏を、1カ月前から隊形移動を指導する。演奏は音楽主任の専門分野で、円滑に指導できる。しかし、隊形移動は広い校庭で大集団を動かすため、指導を苦手とする音楽主任もいる。そんな時、集団への指導が得意な体育主任とティーム・ティーチング(協力的な指導)をすることは効果的だ。

 現在、「チームとしての学校」の重要性が叫ばれている。かつて、いじめは学内でなんとか解決しようとし、時に深刻化する場合もあった。最近では、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが学校に入り、専門的な立場で、教職員と共にいじめ問題に取り組んでいる。

 家庭科のミシン縫いでは、教員一人がミシンのトラブルや児童への個別指導を行うことは困難であろう。そこで、家庭のお母さん方に指導補助を依頼する場合もある。外国語指導では、担任とALT(外国語指導助手)だけでなく、地域のネーティブ・スピーカーを招聘(しょうへい)する学校もある。

 学校・家庭・地域社会が三位一体となり、時に、専門機関等と連携を図り、子どもを育むことは肝要である。

 本学には3学部1学科の学生が一緒に学ぶ「チームケア入門」という科目がある。「食事が一人でできない発達障害の子ども」を事例に、将来、自分が志望する職種でどんな支援が可能かを学び合う。

 例えば、小学校教諭では、事前に献立の食材を説明する・食事を促す言葉かけ等の支援が考えられる。養護教諭・保育士・社会福祉士・理学療法士等では、別の支援が考えられるだろう。学生は、自己の専門分野だけでなく学際的な視点で課題解決を図ることの大切さを学んでいる。

 組織では、目標達成に向け、自分の持ち場の責任を果たすこと、周りの仕事を理解し協働することが大切だ。学校・家庭・地域社会が「のりしろの心」であふれ、大きな輪っかになるといい。昨夏、Aたちの同窓会に招待された。そこで、強固なのりしろの心と色あせない輪を感じることができた。



群馬医療福祉大教授 時田詠子 高崎市上豊岡町

 【略歴】小学校教諭・教頭、県教委指導主事を務めた後、群馬大、早稲田大の両大学院で教育学を専攻。2016年から現職。理論と実践を融合した小学校教員養成に携わる。

2019/01/05掲載

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