女子高生のH子さん 行動こそ幸せへの一歩
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 友達ができた。38歳の僕より21歳年下、女子高生のH子さんだ。縁をつないでくれたのは萩原朔太郎だった。

 2018年5月11日、ブックバー「月に開く」のオープン前日に、レセプションパーティーを開いた。来てくれた一人がH子さんだった。朔太郎好きの彼女は、翌日の朔太郎忌イベントに参加するため、神奈川から前橋へ訪れていた。ネットで調べ、たまたま月に開くの存在を知り、寄ってくれたのだった。

 H子さんの存在を知ると会場はざわつき、参加者は我先にエスコートしたがった。帰りは女性スタッフが、宿泊先まで送っていった。タヌキの群れの中に子ウサギが迷い込んだようなもので、皆そのかわいさの虜(とりこ)になっていた。

 同時に、誰もがその勇気をたたえていた。見知らぬ大人の集まりの中に、完全アウェーの女子高生が一人で参加することは、どれだけ勇気がいるか、想像に難くない。勇敢さは人々の心を打つのだ。

 後日H子さんは僕が、東京の新宿ゴールデン街で経営しているバー「月に吠える」にも来てくれた(もちろん注文はソフトドリンク)。かなりディープな飲み屋街である。僕は本格的に彼女を尊敬するようになった。そして交流が始まった(当たり前だが100%純異性交遊である)。

 何かを得るにはリスクと向き合わねばならない。しかし、人はできない理由を探し、行動する前に諦めがちだ。だがH子さんは、リスクなどものともしない人で、朔太郎忌でもその性分を発揮した。イベントに登壇した方に、もっと話を聞きたいと、関係者に掛け合って、楽屋に入れてもらったのだ。今ではその方と文通をする仲だという。

 「断られたとしても、別に私は傷つかない。初めからダメ元なんです。だったら行かなくちゃ損ですよね」

 東京の喫茶店で、H子さんとのデート中にその話を聞いた(繰り返すが清く正しく美しい交流である)。どこかの酒場のママの「死ぬこと以外はかすり傷」という言葉がある。H子さんは、まさにそれを地で行く人なのだ。

 物事を決めるとき、「自分がしたいかどうか」をまず指針にすべきだと思う。最初から空気なんて読む必要はない。周囲に受け入れられなければ、それだけの話。一時的にへこむかもしれないが、いくらでもやり直せる。

 僕はそう考え、できる限り好きなことをしようと行動してきたつもりだが、気づけば守りに入ってしまうこともしばしば。だから、H子さんのような存在は刺激になる。

 20歳になったH子さんが前橋に来たら、呑龍マーケットのカラオケスナックに連れて行こう。そして、一緒にこの歌を歌おうと思う。「しあわせは歩いてこない。だから歩いてゆくんだね。1日1歩、3日で3歩。3歩進んで2歩さがる」



ジャーナリスト・ブックカフェバー「月に開く」店主 肥沼和之 東京都新宿区

 【略歴】新宿ゴールデン街でブックバー「月に吠える」を経営。萩原朔太郎に魅了され2018年春、前橋・弁天通りにブックカフェバー「月に開く」を開く。東京都出身。

2019/01/31掲載

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