群馬から世界へ(1) 海外で知る自分の価値
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 宮崎県の山あいにある落合酒造という従業員4人の小さな焼酎メーカーの生姜(しょうが)焼酎「利平ジンジャー」が、昨年、米国西海岸の高級バー向けに輸出された。同社の戦略づくりから契約まで支援していた中で、印象に残る社長の言葉がある。「祖父から3代にわたり地元のためだけにつくってきた田舎の焼酎が、まさか世界のセレブに喜ばれるとは思っていなかった。海外に出て初めて自分の焼酎が世界で勝負できるものだという価値を知った」

 私は昨年7月にジェトロ群馬貿易情報センター初代所長として群馬に移り、県内各地のさまざまな企業や産地を訪問したり、セミナー、講演会などで多くの方とお会いするなかで、群馬県には非常にレベルが高い農畜産物、食品、酒、機械、部品などの「もの」と、それを支える情熱と技を持った「人」が非常に多いと感じた。同時に、残念ながら自分たちの本当の価値に気づいていないのではないかとも感じた。

 実際、昨秋シンガポールから招聘(しょうへい)した現地大手スーパーのバイヤーは、県内各地の産地で群馬のハイレベルで多様な食材に驚き、先月世界7カ国からきた日本酒の専門家たちは、群馬の地酒の奥深さと斬新さを絶賛した。

 群馬県のビジネス環境は恵まれており、高品質の「もの」をつくれば近接する首都圏市場で売れるため、安定したビジネスが可能である。だからこそ、リスクを負ってまで海外市場に挑戦する必要性は他県に比べ薄いのかもしれない。しかし今後首都圏市場が縮小するのは確実であり、そうなれば過当競争で価値に見合う価格で売れなくなる時代がくる。その前に、自分たちの本当の価値を知るために、海外にアプローチしてみてはどうだろうか。

 海外に出て現場をみて、同業者や潜在顧客たちと触れることで、海外のものと比較したり、海外の人々の評価を聞くことができ、その結果、群馬では当たり前の「もの」の世界基準での価値を知ることができる。そうした人が増えることで、レベルの高い「もの」と「人」に囲まれた群馬県の価値も再認識されるのではないだろうか。

 海外に視察に行くのは時間もコストもかかり、中小企業にとってはそう簡単ではない。そうした企業のために、ジェトロ群馬は、長年海外でビジネスを実践し現地を熟知するスペシャリストを世界8カ国から高崎に招いて「ワールドビジネスフェスタ in 群馬」を実施する。18、19日の2日間、会場に座っているだけで、世界で何が起こっていて、どんなチャンスがあり、何に気をつければよいのか、相場観がつかめる。

 世界に出て、群馬と自分の価値を知る。まさに今こそ、そのときではないだろうか。そのためのきっかけづくりの場を多く提供していきたい。



ジェトロ群馬貿易情報センター所長 柴原友範 高崎市栄町

 【略歴】1997年、日本貿易振興会(当時)に入会。シカゴ・センターなどを経て専門家による個別支援事業の企画、運営を担当。2018年6月から現職。東京都出身。

2019/02/08掲載

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