ヤリタナゴと工事 保護へ行政の協働願う
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 1998年に2尾のヤリタナゴが再発見されてから、毎年5月にヤリタナゴ観察会を開催してきました。第1回観察会で見つかったのは、やっと1尾、それも尾にけがをしている個体でした。

 ヤリタナゴの主な生息地は笹川下流と周辺の農業用水でした。保護団体「ヤリタナゴ調査会」と「ヤリタナゴを守る会」は、市内外の有志に呼び掛け、農作業に合わせ、春に水路停水時の退避作業、秋に良好な越冬場所への移動等を開始し、併せて個体数調査をしてきました。ヤリタナゴは一気に増加し始め、2004年には1835尾もがカウントされ、この頃、絶滅は回避できたかに思われました。

 しかし、翌05年から減少に転じ、10年に368尾、12年には66尾しかカウントできない事態となりました。

 この間、市が二つの工事を施工しています。05~08年にかけて生息域下流の水路約400メートルを3面コンクリートにする改修と、10~12年にかけて笹川の生息域上流の架橋工事です。架橋工事では河床改変はありませんでしたが、この二つの工事がヤリタナゴ激減の要因であることは想像できます。保護団体の一員として、この工事に対応できなかったことに深い反省がありますし、同時に、市はなぜ配慮しなかったのか不思議でなりません。

 その後、笹川や水路の減水が重なり、ほ場整備工事も始まり、観察会は第16回を最後に中止となりました。

 マツカサガイは、ほ場整備工事が始まってから、多くの個体を失ってきました。その中で、17年11月、隣接するほ場整備区域の水路から、442個のマツカサガイが確認できました。多数のヤリタナゴも生息していました。その水路は改変されず、そのまま環境水路として残されましたので、仮住まいに移動させるストレスを与えることなく、ここで今まで通りに生息していけると思っていました。

 ところが、工事中の現場では思いもよらないことが起こります。18年5月、pH値の高い水がこの水路に流れ込み、多くの個体を失う事態が起きてしまいました。まだ工事は続いています。生き残っている個体は、前稿に書いた藤岡南部の環境水路へ避難してくることになりました。

 この水路について、前稿で心配した長瀞線バイパス工事は、至近を通るけれども、水路は横切らず、工事に際しては湧水が切れないように配慮すると、藤岡土木事務所から伺ったところでした。

 草取り作業は、16年からボランティアがやってきてくれました。電気連合群馬地協「青年女性委員会」と藤岡工業高の皆さんです。藤岡北高が希少植物を預かってくれたこともありました。

 現在、この水路しかすめる場所はなくなりました。一日も早く市との協働が実現されることを願ってやみません。



かんな川水辺の楽校運営協議会会長 掛川優子 藤岡市白石

 【略歴】水生生物の調査や保護活動に取り組み、2002年に環境省水環境部長表彰を受賞。藤岡市環境審議会委員長、やりたなごの会会長を務める。北海道出身。

2019/03/11掲載

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