医師を目指す君へ③ 進む道を客観的に選ぶ
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 私が学生の頃は、今のような臨床研修医制度がなかったため、医学部を卒業して医師国家試験に合格すると、すぐに自分の専門診療科を決め、多くは母校、あるいは他大学の医局に所属します。卒業の半年前(6年生の秋頃)にほとんどの医学生は将来の専門診療科を決めていました。

 医学生が自分に向いている診療科を選ぶのは、難しいことです。現在は、研修医の2年間で専門科を決めることになり、じっくり考える余裕はあります。しかし、当時の同級生が専門の診療科に進んだ後、途中で診療科が合わずに変えたのは、ごく一部でしたので、部活の先輩医師などの話を良く聞いて、皆、客観的に自分の進むべき診療科や研究職の道を選んでいたのだと思います。

 多くの学生は、3~6年生の4年間の医学部専門教育の中で、基礎系の勉強が終わり、臨床系の実習や講義が始まる4~5年生の頃に、まず基礎系の研究者になるのか、臨床系の診療科に進むのか、将来の大きな方向性を決めることになります。大多数の医学生は臨床医の道を選びます。

 ただ、医学の発展の土台を支え続けているのは基礎研究ですので、心底に研究が好きであれば、基礎系の研究室へ進むことは、大賛成です。ただし、臨床医と比べて、収入は決して良くありませんので、自らの基礎研究の感性を研ぎ澄ませ、視野を広げるために患者さんに接すること、また生活基盤を安定させることが重要です。

 そのためにも、私は医師免許を持った基礎研究者は、しっかりプライマリケアの勉強もして、特に、若いうちは非常勤で診療を続けることを強くお勧めします。

 私は医学部の准教授として医学生実習を担当していたことがあります。臨床の専門科を選ぶ時には、まずは内科系、外科系、精神科の中から臨床実習を通して、自分の性格に一番合った道を選んでほしいと話していました。精神科は特殊な才能が必要な診療科との印象を、学生時代から今でも強く感じています。もし人の心理を鋭く読み取る才能があれば非常に魅力的な診療科であると思います。

 多くの臨床科に進む医師は、内科系か外科系か選ぶことになりますが、私を含め多くの医学生はあまり悩まずに決められていることが多いです。内科系と外科系の医師の性格はかなり異なります。

 俯瞰(ふかん)すると、内科系診療科の医師は、急性心筋梗塞などの救急疾患を除き、系統的・理論的に病状を捉え、正確に診断し、時に長年病気に苦しむ患者さんと向き合いじっくり治療にあたります。外科系の医師は、手術中に即時の的確な判断を常に求められます。時に数時間にも及ぶ手術は極めて高い集中力が要求されますが、手術前後の劇的な病状の改善は、外科医としての喜びです。



黒沢病院院長 伊藤一人 玉村町斎田

 【略歴】群馬大大学院医学系研究科泌尿器科学准教授を経て現職。前立腺研究財団・前立腺がん撲滅推進委員。専門は泌尿器腫瘍全般、がん予防医学。群馬大医学部卒。

2019/03/13掲載

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