群馬から世界へ(2) 食の多様性に優しく
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 3月中旬、米国、ドイツ、オーストラリアから7人のヴィーガンシェフが群馬県を訪れた。ヴィーガンとは、肉や魚など動物由来の食品を食べない厳格な菜食主義者で、鰹の出汁(だし)を使った料理も口にしない。日本ではあまり出会うことがないが、米国では2000万人、ドイツでも800万人ほどいると言われる。

 体質的に食べられない人、動物愛護、環境問題の観点から口にしたくない人、健康やファッションのために週1、月1で食べる人など理由もさまざまで、特に若い知識階層に多い。そうした人々を客層に持つ欧米の高級レストランでは、ヴィーガンを含めた個人の食の趣向に合わせてオプションを用意したり、即興でアレンジすることが至極当然に行われている。一方、日本ではヴィーガンと言われてもどう対応してよいかわからず、「面倒くさい客」として扱ってしまう傾向がある。

 今年はラグビーW杯、来年は東京オリンピックで多くの外国人が日本を訪れる。そしてその体験はSNSを通じて世界中に配信されるため、もろ刃の剣となる。今回初来日したドイツ人ヴィーガンシェフは、当初6千人以上のフォロワーに対し「ヴィーガンが日本で住むのは困難だ」と投稿した。しかし、その後、宿泊した温泉旅館の朝食ビュッフェで初めてヴィーガン表示を取り入れてくれたのを見て大喜びでその写真を配信し、最後は「また日本に来たい」とコメントしてくれた。

 表面的な「面倒くさい」要望とその場の対処策だけでなく、背景にある人や考え方に関心を持って真摯(しんし)に聞き、何ができるのか情報を開示しながらコミュニケーションをとり、お互いの妥協点を見いだしてマニュアルにない柔軟な対応を提供する。その一つの体験で来訪者は特別感と感謝で自然と笑顔になり、その笑顔を見て受け入れ側も幸せになる。こうしたやりとりを楽しむくらいの余裕があってこそ本当の意味でのおもてなしができるのではないか。

 その意味で群馬は有利だ。トップシェフもうなるレベルの高い食材とその背景にある情熱的な生産者、ダイナミックな自然がある。特に群馬は、蒟蒻(こんにゃく)、野菜、梅、豆腐、納豆、醤油(しょうゆ)など多様で高品質なヴィーガン食材が豊富である。もちろん世界遺産、温泉といった観光資源もあり、何と言っても東京から近い。

 群馬にさえ来てくれれば、どんな食の趣向を持っている人でも必ず満足させるというくらいの度量と誇りを持って受け入れたい。そんな仲間が増えれば、「ヴィーガン・フレンドリーな群馬県」、「食の多様性に優しい群馬県」としてブランディングができ、インバウンド、輸出増にもつながる。そうした流れが群馬発で日本中に広まることで日本に対する印象も変わるのではないか。そんな動きをここ群馬から創り出したい。



ジェトロ群馬貿易情報センター所長 柴原友範 高崎市栄町

 【略歴】1997年、日本貿易振興会(当時)に入会。シカゴ・センターなどを経て専門家による個別支援事業の企画、運営を担当。2018年6月から現職。東京都出身。

2019/03/30掲載

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