災害とドクターヘリ 搬送・救命に増す役割
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 2019年3月現在、43道府県に53機のドクターヘリが配備されています。群馬県ドクターヘリは09年2月に配備され、全国で17機目でした。群馬県の空を毎日のように飛び、ドラマなどにも出ているドクターヘリ。現在は皆さんにも非常に身近な存在になっていると思います。どのようなきっかけで日本に導入されたのかはご存じでしょうか?

 実は、1995年1月17日の阪神淡路大震災にさかのぼります。兵庫県淡路島北部沖の明石海峡深さ16キロを震源としたマグニチュード7.3の大地震です。死者6400人、負傷者4万3000人に及ぶ甚大な被害でした。

 地震の衝撃や液状化により道路や鉄道などの交通網は寸断、都市機能が破壊されました。徒歩や車での医療機関受診がかなり困難な状況であったようです。当然、医療機関も水や電気、医療ガスなどの被害を受けていますので、日常の医療を患者に行うことができません。

 日常の医療を受けられるようにするには、被害のなかった医療機関に患者を搬送しなければなりません。では、どのように搬送するのでしょうか? 陸路が使用できなければ空路を使用、つまりドクターヘリを活用するわけです。しかし、当時は、医療搬送に空路を使用するという発想がありませんでした。災害初日の空路医療搬送は1回、17~19日の3日間で17回しかなかったと言われています。

 98年にドイツで、日本でいう新幹線の脱線事故が起きました。死者101人、傷病者70人の大災害です。この時、30機のヘリコプターが参集し、3時間で全ての傷病者を医療機関に搬送したと言われています。3年間の違いはありますが、同じ時期に諸外国では、災害にヘリコプターを使用すると効果的であることが分かっていたわけです。

 阪神淡路大震災後、日本は消防防災ヘリを導入し、同ヘリの救急搬送を可能にします。2001年から、ドクターヘリ事業が本格始動、07年には「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療確保に関する特別措置法」(ドクターヘリ法)が成立し、一気に各道府県で導入が進みました。

 ドクターヘリが広域災害時に初めて運用されたのは、04年新潟県中越地震でした。その後、07年新潟県中越沖地震、08年岩手・宮城内陸地震でも医療搬送や医療者の搬送に携わりました。11年東日本大震災では被災地内に16機のドクターヘリが入り、医療搬送を行いました。あれから、8年が経過し、ドクターヘリは日常の救急医療だけでなく、災害時になくてはならない医療搬送リソースとなっています。

 群馬県ドクターヘリは今年で10年目。年間900件を超える出動があります。東日本大震災のような広域災害だけでなく、群馬県内の局地災害でも活動し患者の命を救っています。



前橋赤十字病院高度救命救急センター長 中村光伸 前橋市川原町

 【略歴】群馬大医学部附属病院脳神経外科医などを経て、2015年4月から現職。日本赤十字社県支部災害医療コーディネーターも務める。群馬大医学部卒。

2019/04/10掲載

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