ガザ地区の医療ごみ 紛争の陰で迫る危機
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 この原稿を書いている最中にも、ガザ地区周辺ではロケット弾や空爆による攻撃が続けられている。ガザ地区は私の居住地から車でわずか1時間程度の距離にある。前橋市の広瀬川美術館で2月にガザ地区から来日した画家3人による作品展とトークイベントが開催されたため、読者の中にもこの地を身近に感じる方が多くいるかもしれない。

 ガザ地区は、前橋市よりやや広い面積(約365平方キロ)を持ち、その中にその5倍以上の人口(約188万人)が生活していることから「世界で最も人口密度が高い場所」と言われている。ラマッラーやベツレヘム等の都市があるヨルダン川西岸地区から離れた飛び地にあり、周囲を地中海と、イスラエルおよびエジプトに囲まれている。ここを舞台に紛争が長年続けられ、双方に多くの負傷者が出る結果となっているのだ。

 このような状況の中で、深刻なごみ問題も発生している。それは医療処置で発生する医療ごみ、特に血液等が付着した注射器やガーゼなど、病原体が含まれている可能性のある感染性ごみである。推計では、ガザ地区にある180を超える大小の病院から、医療ごみは毎日合計約7トン、そのうち感染性の可能性のあるごみは約1トン排出されているとされる。

 これには、この紛争による負傷者の治療のため、日本をはじめ多くの国や国際機関が行っている緊急医療支援による医療ごみも含まれる。しかし、そのほとんどが一般ごみと一緒にごみ箱に捨てられ、そのままごみ収集車によって運ばれた後に最終処分場で埋め立て処分されているのだ。

 しかもそこは人口密度が高いガザ地区である。その医療ごみに病原体が含まれていた場合には、病院内・外において感染症が発生し、最悪の場合にはパンデミック(感染拡大)が起こりうる状況に置かれていたのだ。

 この状況に対して、国際協力機構(JICA)は、ガザ地区における医療ごみの適正処理体制を構築するための支援を行っている。各病院内で感染性ごみの分別の徹底と、その収集・運搬、滅菌処理、埋め立てといった一連の流れ、さらにその体制維持のための財務体制の構築である。

 この取り組みを、地方自治庁、保健庁、さらには国連機関(UNRWA)と共同で、一部地域を対象に試行している。将来的にはパレスチナ関係機関自らが、構築した体制をガザ地区全域に普及させていく予定だ。

 「ガーゼ」の語源は、かつてその製造の中心であったこの「ガザ地区」に由来すると言われている。紛争の結果としてこの地でそのガーゼ等の医療品が大量に必要になり、そこから排出される医療ごみがもたらす新たな問題。それを未然に防止するための支援がこのガザ地区で今まさに必要になっている。



国際協力機構(JICA)専門家 村田貴朗 前橋市下川町(在エルサレム)

 【略歴】2016年からJICAに勤務し、10カ国以上の環境プロジェクトに携わった。廃棄物管理の専門家としてパレスチナ地方自治庁に派遣中。京都大大学院修了。

2019/04/13掲載

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