医師を目指す君へ 覚悟決め堅い土台築く
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 現在は臨床研修医制度により、2年間の初期研修期間があり、3年目から専門科に進むことになります。私が医学部を出た1990年当時は卒業後すぐに専門科に進みました。私は群馬大医学部附属病院に勤務し、泌尿器科を専門科とすることに決めました。

 医師になった1日目から、生活は一変します。学生時代の勉強、実習から百八十度世界は変わり、非常に厳しい現実の世界に365日、24時間、常に身を置くことになります。そして専門医になるために学ばなくてはいけない、医学的な知識や手技が限りなくあります。特に医師になり1年目は、ほぼ毎日、何かしらの初めて行う医療行為がありますので、緊張の連続です。医師になり一番きつかったのが、1年目の大学病院での勤務であったと思います。

 現在、専門科に入ってくる若い医師は2年間の初期研修で基本的な医療技術を幅広く学んでいます。専門医としての初年度勤務という点では同じでも、新米医師として1年目から専門科に進んだ当時のわれわれとは、余裕度がかなり違うと感じます。

 医師は患者さんのことを最優先に考えて尽力するものであることは、古今東西変わるものではありません。しかし、当時はオンとオフの切り替えが、医療界全体ではっきりしていませんでした。日々十分な睡眠がとれず、1年目の大学病院勤務時の休日は、1年間で1~2日でした。

 医師が精神的にも肉体的にも健康でなければ、最善の医療は提供できませんので、良いことではありませんが、当時の新人医師の生活の過酷な状況を伝える義務がわれわれにあると思います。健康を崩すほど身体を酷使するような状況は許されませんが、多くの新しいことを学ばなければならない新人医師は、肉体的にも精神的にも相当に負荷がかかり、激務であることは、今でも変わりありません。

 ただし、当時、非常に忙しい日々の中でも、自分が一生涯をかけると決めた仕事、専門ですので、中途半端なことは絶対にしたくないとの思いがあったことも良く覚えています。仕事に追われながらも、専門知識を幅広く、系統的に学ぶため、泌尿器科専門医としての知識を全て網羅している千ページ近い泌尿器科専門書を1年で読破しました。
 また、幅広い知識を得るために、月1回刊行される専門雑誌に掲載された過去3年間分の珍しい病気や、教育的な診断・治療の経過をたどった患者さんの報告(症例報告)に全て目を通しました。

 医師に限ったことではありませんが、何事も、まずは自分の専門領域の基盤をしっかり勉強することが重要です。土台が弱い医師と、堅い土台ができている医師とでは、患者さんの検査結果や画像検査からみえる世界の広さが全く違うため、診断や治療に差が出るのだと思います。



黒沢病院院長 伊藤一人 玉村町斎田

 【略歴】群馬大大学院医学系研究科泌尿器科学准教授を経て現職。前立腺研究財団・前立腺がん撲滅推進委員。専門は泌尿器腫瘍全般、がん予防医学。群馬大医学部卒。

2019/05/01掲載

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