異国の子どもたち 目の輝きが教えるもの
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 これまで、日本の子どもたちや教育について書いてきましたが、今回は、世界の子どもたちに出会って感じたことを書きたいと思います。

 8年前、教員を退職した私は、単身アフリカのタンザニアという国へ赴きました。小さい頃から世界の子どもたちに関心があり、遠く離れた地で暮らす彼らに会いたかったからでした。初日こそ高熱を出し、洗礼を受けましたが、少しずつタンザニアの水と風土になじんでいきました。

 肌の色の違い、髪がチリチリの子、携帯を使いこなすマサイ族、夕日に照らされる土壁の家。見るもの全てが新鮮に映り、水や電気事情といった現地の暮らしや土埃(ほこり)の影響から高速で伸びる鼻毛にもいちいち心動かされました。

 2カ月の滞在は、土造りの簡素な家々のある地域を抜け、さらに林を二つ越えた先にある孤児院に歩いて通う日々でした。子どもたちと遊んだり勉強を教えたり、時には同じベッドで寝たり。彼らの生活では、洗濯機も冷蔵庫もガスコンロもありません。薪(まき)が足りない日々はしょっちゅう。食材も少なく、トウモロコシの粉で作るウガリという主食に煮豆があればいいほうで、小さい魚やアボカドがあると、ごちそうでした。

 ある日、かまどがある小屋へ行くと、薪や木切れが足りない状況に出くわしました。住み込みで世話をしている女性がスワヒリ語で何か言うと、それを聞いた子どもたちがその小屋から出て行きました。少しして戻ってきた子どもたちの手に握られていたのは、鉛筆でびっしり書かれた学校のノート。なんと、子どもたちは、薪の代わりにノートを燃やし始めたのです。目の前で起こっている出来事はあまりに衝撃的でした。

 新しいノートを手にし、あんなに喜んでいた子どもたち。勉強を教わりたがり目を輝かせて学ぶ彼らにとって、ノートは大事な宝物のはず。どんな思いでノートを燃やしているのだろうと、いろんな思いが駆け巡りました。「そうか。この子たちにとって、今は生きること・食べることが最優先なのだ…」。彼らの凜(りん)とした横顔を見ながら、そう感じたのを覚えています。

 タンザニアの他、カンボジアやホンジュラス、エルサルバドルの学校にも訪ねて行きましたが、そのたびに、日本での生活を振り返り、複雑な気持ちになる自分がいました。

 しかし、現地の子どもたちをかわいそうと思ったことはありません。なぜなら、彼らは生き生きしているからです。子どもたちの目は輝き、どの子もきらきらして命のエネルギーを感じます。飛行機雲を見て「ロケットだ!」と叫び、みんなで空を見上げる子どもたち。彼らとともに過ごした日々は、なんと豊かな時間だったろうと心から感じます。

 豊かさとは何でしょうか。帰国し、数年たった今も、常に考え続けています。



フリースクール「まなビバ!シリウス」代表 安楽岡優子 館林市仲町目

 【略歴】小中学校の教員を11年間務め、アフリカ・タンザニアでのボランティアや東北で復興支援教員を経験。2018年4月にシリウスを立ち上げた。熊本市出身。

2019/05/05掲載

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