スポーツをする人へ マウスガードのススメ
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 スポーツをしている人たちが最も興味があると思うマウスピースについて書いていきます。一般の皆さんも、ラグビー選手やボクサーが口の中に装着しプレーしている姿を、何度かテレビなどで目にしたことがあると思います。

 では、何のために使用しているのでしょうか? 彼らは競技中に歯を折ったり、口の中を切ったりするけがを防止するために着けてプレーしています。口を守るための装具ですので、私たちはマウスガードと呼んでいます。決して競技力を上げるために着けているのではないということは覚えておいてください。

 実物を見たことのない方にはイメージが難しいと思います。同じマウスピースでも、歯ギシリから歯を守るナイトガードや、顎関節症の治療で使用されている物と違い、衝撃から口とその周りを守るために柔らかい素材で、ある程度の厚みを持って作られています。自分のことを守るだけでなく、歯が他人に刺さり傷つけることを防ぐ刀の鞘(さや)のような役目もしています。

 マウスガードは、けがを防ぐだけでなく咬(か)み合わせを整え、しっかり咬めるようになる効果もあります。歯を食いしばれると、首に力が入りやすくなり頭部を支えやすくなります。そのためマウスガードは、脳振とうや首のけがの予防と軽減に対して効果もあるとも考えられています。

 脳振とうは、頭部が揺れることにより起こることが多く、頭部のダメージは蓄積されることがあります。そして脳振とうは一度起こすと再発しやすく、再び受傷した際には脳へのダメージがより大きくなって後遺症を残す可能性もあり、現在その対策が重要な課題となっています。

 アメリカのアメリカンフットボールのプロリーグ、NFLが引退後の選手を調査したところ、アルツハイマーの発症率や健忘などの後遺症が多いことが分かりました。そんな面からも、首の筋力がまだ弱くてもスピードやパワーでシニアに近いパフォーマンスをみせる中高生には、ぜひ使用してもらいたいと思っています。

 しかし口を開けたら落ちてしまったり、咬み合わせの合っていない物を使うと逆に顎の関節を痛めたり、骨折の原因になってしまう恐れがあります。私たちは、10年ほど前に高校ラグビーでのマウスガードの義務化に伴って県ラグビー協会のメンバーに加わりました。希望のあった県内の高校生に県歯科技工士会の協力を受け、的確なマウスガードを提供する活動をしています。強い接触のある競技だけでなく、さまざまな競技特性に合わせた物があります。

 歯科から提供できる安全対策として、多くの選手にマウスガードを着けて、安心して思いっきりプレーしてもらえるように、これからもこのサポート活動をしていきたいと思っています。



歯科医師 片野勝司 みなかみ町湯宿温泉

 【略歴】スポーツデンティスト。片野歯科医院長。日本レスリング協会スポーツ医科学委員会。全日本スキー連盟情報医科学部。県ラグビー協会。東京歯科大卒。

2019/05/06掲載

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