ヘルス・リテラシー 納得の人生歩むために
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 今回のテーマは、「ヘルス・リテラシー=自分の体を正しく知り、時々に必要な健康情報を入手・活用できる能力」についてです。とりわけ、女性のヘルス・リテラシーは、私たちが選ぶ未来の選択に実にダイレクトに影響するという観点で、重大な意味を持ちます。

 このことを象徴する統計データがあります。先進国を中心とした世界18カ国の男女に「妊娠しやすさ」の知識を聞いたある国際比較研究で、日本人女性の正答率は、下から2番目という低さでした。ですが、現実は残酷です。私たちが知ろうが知るまいが、35歳を境に、女性の「妊娠力」はほぼ例外なく急降下を始めます。

 これは妊娠・不妊の知識に限ったことではなく、若い女性の婦人科検診の受診率や、婦人科クリニック自体の受診率も、他の先進国と比べると、驚くほど低いのが実態です。

 かたや、これも統計上の事実として、この国の女性のがん患者数は30代で男性の約3.3倍、40代でも2.8倍。30代女性入院率は1.5倍。うつ病罹患(りかん)も全世代で男性を上回る等、多くの女性の健康課題は、仕事が軌道に乗る一番働き盛りな時期にリンクして生じる傾向があります。さらに、生涯を通じライフステージや女性ホルモンの影響に翻弄(ほんろう)され、日常から男性より不調症状を多く抱えがち、という現実もあるのです。

 これらは裏を返せば、健康変化に左右されやすい女性が自分の心身を知り、リテラシーを磨いておくことは、想定外に備え、起こりうる衝撃を最小に抑えることにつながります。かつ、子どもを持つ・持たないを始めとした、生きる上の分岐点となる局面で、より多くの選択肢を残せたり、納得して人生を歩めたりする可能性が高くなるはずです。

 いわばヘルス・リテラシーは、最大の自己防衛であり、最強のライフデザインスキルなのです。ライフとワークは、とことん連動してしまう、それが女性の人生でもあります。この事実を私たちは味方につけられたらいいですし、周囲はまず知ることが大切です。

 さて、そんな周囲の人たちは実際、何ができるでしょう。繰り返し言及している通り、「女性の体と健康」に関するトピックはどれも繊細なだけに、オープンにしにくく問題が潜りがちになり、周りもサポートできず本人は深刻な「働きづらさ」や「生きづらさ」を抱えてしまう、そんな悪循環が回りやすい特徴があるのです。

 当社は、社会のこうした事象を「サイレント(=声をあげられない、沈黙の)・ダイバーシティ」と名付けました。次回はこの、サイレント・ダイバーシティという観点から、現代女性が置かれた環境や、周囲の支援についての考察を書いていきます。



ライフサカス社長 西部沙緒里 東京都荒川区

 【略歴】博報堂でマーケティングなどを経験。群馬イノベーションアワード2015ファイナリスト。16年に妊活や女性の健康を支援するライフサカスを起業。前橋市出身。

2019/05/16掲載

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