イイトコカット 寄り添い安心と自信に
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 自閉症、発達障害、重度心身障害のあるお子さんのヘアカットの大変さを知ったのはイイトコを立ち上げる頃だった。「ぜひイイトコでヘアカットをお願いしたい」。そう美容師(通称まゆみちゃん)に伝えると、快諾してくれた。ありがたい力強い味方ができた。イイトコカットの依頼は年々増え続けている。

 イイトコの月だよりにイイトコカットの特集を企画し、お母さん方からアンケートをいただいた。アンケートからお母さんのいろんな思いや社会の目に見えない壁を感じる。お母さんから許可をいただき一部ご紹介したい。

 ―なぜイイトコカットを利用しようと思ったのか。

 「キッズカットのある理容院に行っていましたが、すごく嫌がって号泣。いつもすみませんと謝りながらやってもらうのがすごく心苦しくて、発達支援センターで相談したら、『こんな所もある』とイイトコのプリントをいただいた。分かってくれる人がいるかもしれない、と思い切って電話したのがきっかけです」(F君の母より)

 「思い悩み、両親でわが子を押さえ、家中毛だらけになりながらカットをしていた」「生まれてから一度も切っていないから女の子と間違われるが、何もできないと諦めていた」などの回答もあった。ヘアカットはお母さんにとっても家族にとっても憂鬱(ゆううつ)な時間だったと感じた。

 イイトコカットに来る子たちは、さまざまな理由でヘアカットが苦手だ。感覚過敏で首や耳回りを触られるのが嫌、ハサミやバリカンの音が怖い、先の見通しが分からないことはできない、じっとしていられない…。一人一人違うから、まだまだ理由はありそうだ。

 しかし、一人一人のお子さんに寄り添っていくと必ず好きなものがある。「子どもたちの好きなものを取り入れていこう」。美容師のまゆみちゃんの思いは常に温かかった。数字が好きな子には、数えているうちにカットを終了しよう、水が好きなら美容師の水スプレーを自分で持ってかけてもらおう。それらはお守りに変身した。あっという間にヘアカットは終わり、お母さんが笑顔に変わる。子どもたちは少し誇らしげである。

 F君の母からの感想を最後にご紹介したい。

 「初めて行った時、子どもの目線に立って、暴れてしまう息子を一緒になだめてくれ、常に大丈夫だよと声を掛けてくれました。美容師さんがそこで素早くカットしてくれて、一つ一つできたことを声に出して褒めてくれました。息子は髪を切る=嫌なこと、なので最初は泣きましたが、私は、あぁ一人じゃないんだぁ、とすごく安心したのを覚えています」

 イイトコカットは、お母さんの安心できる居場所であり、これから成長するお子さんと社会の接点でもある。



特定非営利活動法人iitoko代表 浅香千恵 高崎市吉井町下奥平

 【略歴】幼稚園教諭や障害児の放課後デイサービスの職員を経験。2014年、障害児を育てる母親を支援する団体「iitoko」設立。高崎保育専門学校卒。

2019/05/23掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事