令和を祝う郡上踊り 文化財を生かすヒント
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 平成最後の4月30日夜、岐阜県から郡上踊りがNHKや民放テレビで生中継されました。令和を迎える日本人の多くが、改元を機に新しい時代を迎えようと躍動する気持ちを、この踊りが象徴しているようにも感じられました。

 諸説ありますが、郡上踊りは江戸中期の郡上藩主青山氏の時代に始まったとされ、徳島の阿波踊りや秋田の西馬音内(にしもない)の盆踊りとともに、日本三大盆踊りの一つとされ、国重要無形民俗文化財に指定されています。

 郡上藩主青山氏の姓は上野国吾妻郡青山郷(現中之条町青山)が発祥であると、江戸幕府編修の『寛政重修諸家譜』に記されています。このような縁で、中之条町は今年3月、郡上市や東京都港区青山との都市間交流を推進するプロジェクトを発足しました。

 中之条町五反田で毎年2月24日の天満宮の宵祭りに「上州白久保のお茶講」が行われます。南北朝時代に盛んに行われた闘茶を起源とし、お茶の種類を飲んで当てる優雅な行事です。南北朝の頃、青山氏の先祖はこの闘茶にも関わったとされています。わが国では唯一中之条町にのみ伝承され続けている国重要無形民俗文化財です。町では小学6年生になると、体験実習を通じて地域文化の伝統を継承する重要性を学びます。

 一昨年、高崎市で全国博物館大会が開催されました。その席上で、観光インバウンドの拡充に資する文化財の活用について、博物館が果たすべき役割が強調されました。

 2020年には4000万人以上の海外観光客が日本を訪れると期待されています。博物館などは国内外の観光客に対して歴史文化の魅力を発信し、群馬を身近に体感してもらうことが求められるでしょう。地域の活性化に貢献するチャンスです。

 これまでの博物館は資料の保存や研究に重きが置かれ、その活用には積極的ではありませんでした。資料を公共の場で一定期間展示したり、触れたりすることは資料の劣化や破損のリスクを伴うからです。現在は資料の複製技術が急速に進歩し、対策されている場合もありますが、複製制作には資金的困難を伴う場合が少なくありません。

 一方、無形民俗文化財は地域の人々を介在することによって維持、発展するという特徴があります。地域文化の伝承の糸が一度切れてしまうと、その修復や復活は不可能になってしまうので、保存会や市民の理解と協力を得て継続することが必要です。

 今年の郡上踊りは7月13日に始まり、9月7日まで続きます。4月30日は令和元年を祝うために、急きょ10連休の最中に特別に開催したわけです。郡上市と市民が一つの目的の下に、一体となったからできたことだと思います。テレビ中継を見て、文化財の活用方法について学ぶべき点が多くありました。



中之条町歴史と民俗の博物館「ミュゼ」館長 山口通喜 中之条町中之条町

 【略歴】パナソニックを早期退職した後、横浜開港資料館などに勤務し、2016年4月より現職。中之条町出身。東京外 国語大中国語学科卒。

2019/05/31掲載

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