脱水予防 特性理解し、適切管理
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 2018年は猛暑日ラッシュとなり熱中症対策や脱水予防が繰り返し話題に上りました。猛暑日でなくても、登山活動中は汗や呼気からの水分ロスが極めて大きく、こまめな水分と電解質(塩分)の補給が必要です。

 しかし、多くの場合、水分ロスを山中で補うためには、重い飲料水を自ら背負って歩かなければなりません。重い荷物を持てばエネルギー消費も水分のロスもさらに増えますから、血液や組織液で構成される体液の管理を登山活動中に適切に行うことは難しい作業です。少なくとも、山に向かう前に、体を維持するために必要な成分を十分に摂取しておくことが肝心です。

 さて、齢(よわい)を重ねるにつれて血管に柔軟性がなくなり、動脈硬化症や高血圧症と診断される中高年者は少なくありません。30歳以上の日本人男性の60%、女性の45%が高血圧という統計もあります。病名から血圧が高いことが問題と考えられがちですが、血管の弾力性低下が本質であることが多いので、下がり過ぎにも警戒が必要です。

 特に脱水の状態で血管が急に拡張すると、動脈硬化の進んだ人では極端に血圧が下がります。そして、脳や心臓に血液を送りこむ勢いがなくなり、脳や心臓が酸素・栄養不足に陥ります。

 よく悪い例として挙げられるのは、「大汗をかいて脱水状態となっているのに、下山後のビールをおいしく飲むために水分摂取をとことん我慢し、夕食前に汗を流そうと熱い露天風呂に飛び込む」といった状況です。

 血液の体積減少と末梢(まっしょう)血管拡張による血管容積の拡大があわされば、血管内の圧力は極端に低下します。目の前が暗くなり座り込むくらいで済めばよいのですが、脳梗塞や心筋梗塞で命を落とす危険があります。ビールの喉越し感覚に命をかけるのは少し大胆すぎるでしょう。

 夏場の熱中症への注意として、「高齢になると喉の渇きを感じにくくなるので、喉が渇かなくても水分を摂(と)りましょう」と呼びかけられています。一方、若年者は体の熱産生が大きいので、運動量に見合った相当量の水分を摂ることが大切です。

 どんな水分を摂るのが良いかとよく聞かれますが、電解質(塩分)の摂り過ぎも良くないので、市販のスポーツドリンクを半分くらいに水で薄めた程度が目安とされています。高血圧や糖尿病で薬を飲んでいる方々は特に注意が必要ですので、自身の体の特性をよく理解して水分管理を行う必要があるでしょう。

 最近は運動前後や運動中の栄養、水分補給法に関してさまざまな指南書が出ています。マラソンやトライアスロンのマニュアルなどはこうした競技の選手でなくても非常に勉強になりますから、ぜひ参考にしてほしいと思います。



群馬大大学院医学系研究科教授 斎藤繁 前橋市古市町

 【略歴】日本山岳会群馬支部が主催する「健康登山塾」の講師を務める。著書に「病気に負けない健康登山」(山と渓谷社)など。群馬大大学院医学系研究科修了。

2019/06/08掲載

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