恐竜、動物、爬虫類… ワイヤに命を吹きこむ
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 黒沢直啓(とくひら)さんは、小学生の頃から工房あかねの絵画教室に通い始め、就職した今も継続して来ている。自閉症の障害がある。

 黒沢さんはワイヤで立体を作る。金属やプラスチックのガラクタを芯にして、ワイヤを巻いて太くしていき、細部はペンチを使い、恐竜や野生動物、爬虫(はちゅう)類等を制作する。最初は手のひらサイズだったが、年々大きくなっている。支えなしに足で立たせることにこだわりがあり、立つと「できたー」と言って完成だ。見たものを写真のように鮮明に記憶する力が強いのだろう、博物館や動物園で見たと思われる生き物を360度どこから見ても違和感ない形にしあげている。

 彼の作品には骨や筋肉等、血の通った生命を感じる。ワイヤに命が吹き込まれている。触ってみたいという刺激をみんなに与え、展示に出すと子どもがいじって形が崩れてしまったりする。本人はそれを見ても怒らず淡々と直している。人と会話をすることは苦手だが、「今度○○作ってください」という依頼をしっかり覚えていて(その場ではダメかな? という薄い反応なのだが)、次の週には忘れず作ってくれる。去年からはイベントでの公開制作も始めた。1時間くらいでと伝えると1時間ぴったりでできあがるようになった。真面目で誠実な人だと思う。

 黒沢さんの作品に、スタッフもメンバーも周囲も、みんな夢中だ。すごい、と面白い、の感情が両方わき起こる。ネットで発表すると反響があるし、ファンになって購入する人も多い。

 しかし障害者向けの公募展に応募すると、受からない。「障害者」としてはきっとうますぎるのだろうと思う。多くの公募展では、従来の型にはまらなかったり、きれいに整っていなかったり、素朴で癒やし系であったり、というのを求めている気がする。培われた技術で、本物に近づけようと表現された作品は、そこから外れているのだろう。応募する場所を間違えているだけなのかもしれないが、歯がゆさがある。

 本人は何かに入選することなど多分どうでもいいのだろうが、個人的には作品のおもしろさがもっとたくさんの人に届いてほしいと思う(たくさんの人に見てもらえればそれでいいのだから、賞等にこだわる必要もないのだが)。

 黒沢さんにとって創作活動が酸素のように必要不可欠なものなのか、子どもの時から続く日常にすぎないものなのか、どちらなのかはわからない。こちらのことなど気にせず、好きなように続けていってもらえたらと思っている(どんなに評価されていても、本人が作るのをやめてしまうこともよくあることだ)。そしてこちらはコツコツと発表する作業をして、発見してくれる人が増えていくのを期待しているのだ。



NPO法人工房あかねアトリエART・ON支援員 上野理津子 高崎市大沢町

 【略歴】2013年、障がいを持っている人たちの芸術活動を支援する「NPO法人工房あかね」に入職。高崎女子高―金沢美術工芸大芸術学専攻卒。学芸員資格所有。

2019/06/09掲載

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