珠玉の名言をつなごう 教育の不易を考える
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 松尾芭蕉は俳諧の理念である「不易流行(ふえきりゅうこう)」で、「不易=時代を超えて変わらないもの」と「流行=社会の変化と共に変わるもの」の双方が大切だと説いた。

 教員の大量退職時代を迎え、ベテラン教師の経験に裏打ちされた不易の名言が、若手にうまく引き継がれるか危惧している。以下、三つの名言を記すが、いずれも作者不詳である。これらは学校に限らず多くの場所で応用できる。

 【練習は本番のように、本番は練習のように】

 学校では危機管理の一環として、地震の避難訓練を行う。訓練時、子どもが本当の地震に出合ったように真剣に取り組めば、本当の地震に遭遇した場合、適切な対応が取れる。しかし、生半可に訓練に取り組めば、実際の地震でパニックに陥る。

 また、教員を目指す学生は教育実習前に、大学で模擬授業を行う。授業では、代表学生は教師役を、その他の学生は児童役を務める。大学生による教師役は拙(つたな)く、大学生による児童役は優秀過ぎ、初めはぎくしゃくする。しかし、模擬授業本番を迎えるまでに両役が十分な練習をすることで、模擬授業が深まる。

 【指導の第一歩は実態把握】

 例えば、小学校算数「わり算(除法)」を指導する場合を考えよう。除法で商を立てるとき、足し算・引き算・掛け算が必要である。教師は一人一人の加・減・乗法の習得状況を把握し、不足していれば補うことから、わり算指導は始まる。相手(=児童)を知ることから綿密な戦略(=指導)が立てられる。

 この実態把握をおろそかにすると、児童に無理難題や易し過ぎる課題を与えることになる。児童にはもう少しの頑張りで解けるという適度な抵抗感のある課題が望ましい。

 【教師は五者(学者・医者・芸者・役者・易者)であれ】

 五者の解釈は、諸先輩により若干違うが、筆者の意見も含め述べたい。五者の一つ目は、専門性を持ち、学び続ける「学者」。楽しく分かりやすい授業を探究し、社会の変化に応じた新たな学び(流行)に躊躇(ちゅうちょ)しない教師である。二つ目は子どもの心身の状態への観察眼を持つ「医者」。熟練教師は、子どもの表情や言動から体調が察知できる。

 三つ目はこれは人に負けないという一芸を持つ「芸者」。画一的な教師集団では、いまどきの多様な子どもには対処できない。四つ目は表情豊かで説得力のある「役者」。教師は黒板を背にし、教壇という舞台に立つ演者だ。五つ目は子どもの適性を考え、将来の夢への支援ができる「易者」。子どもの長所を見つけ可能性を伸ばす姿だ。

 指導者は、温故知新の精神で先輩からの名言を咀嚼(そしゃく)し、実践し、自分なりの解釈を持つことも大切だ。そして、次代の指導者へ「珠玉の名言リレー」が途切れないことを願うばかりだ。



群馬医療福祉大教授 時田詠子 高崎市上豊岡町

 【略歴】小学校教諭・教頭、県教委指導主事を務めた後、群馬大、早稲田大の両大学院で教育学を専攻。2016年から現職。理論と実践を融合した小学校教員養成に携わる。

2019/06/14掲載

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