パレスチナのごみ問題 数値の価値とSDGs
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 最近SDGsという言葉をよく目にするようになった。持続可能な開発目標と訳されるSDGsとは、国連が2015年に採択した、貧困や不平等・格差、環境問題などのさまざまな問題を根本的に解決していくことを目指す世界共通の17の目標である。「持続可能な開発」という言葉は分かりづらいが、簡単に言うと、将来の世代のために環境や資源を破壊せず、現在の生活をより良い状態にしていくことを意味する。

 この17の目標は169の具体的な目標(ターゲット)で構成され、この中にはごみ対策に関する目標も含まれている。主に、ごみを適切に管理し環境への悪影響を軽減すること、3R(ごみの発生抑制、再利用、再生利用)によりごみの排出を大幅に削減すること、といった目標だ。

 その中でごみの収集率、最終処分率、リサイクル率といった「数値」に基づく評価指標が設定され、各国に目標数値設定とその達成に向けた取り組みが求められている。日本を含む各国が、既にその取り組みを進めている。

 では、パレスチナではどうか。SDGsが採択された当時、その取り組みを進めていく上で大きな問題に直面した。ごみに関する正確なデータがほとんどなかったのだ。パレスチナの各地域でどのような種類のごみが毎日どのくらいの量で発生しているのかといった基本的な数値データすら政府に把握されていなかった。数値に基づき実際の状況を正確に把握し、将来のごみ発生量等を予測することは、適切なごみ処理を進める上で必要不可欠である。

 そこで、パレスチナ政府はJICAと共同で、地域ごとのごみに関する数値データ、つまりごみ収集量から最終処分(埋め立て)量といった数値やごみ処理体系といったデータの収集・分析を進めた。最終的にはパレスチナ初の「ごみデータブック」として冊子にまとめた。この中で、地域ごとに数値データを整理するだけではなく、そのデータを地域間で比較できるようにしている。

 これにより、各地域で数値に基づいたごみ処理計画を立て、計画に基づいたごみ処理が実現できるようになった。また、パレスチナ政府はその数値データに基づき、SDGsを踏まえた廃棄物(ごみ)国家戦略を策定し、ごみ対策への中長期的な計画をまとめた。さらに、このデータブックは、パレスチナのごみ問題へ関心を持つ国際機関や海外民間企業がその現状を正確に把握するための貴重なガイダンスとなり、支援や投資の促進に役に立っているのだ。

 想像や思い込みではなく、事実(数値)に基づいて現状を正確に把握し、それを元に適切な対策を取ること。これにより、SDGsという国際的な取り組みに同調した持続可能なごみ対策がパレスチナで形成されつつある。



国際協力機構(JICA)専門家 村田貴朗 前橋市下川町

 【略歴】2016年からJICAに勤務し、10カ国以上の環境プロジェクトに携わった。廃棄物管理の専門家としてパレスチナ地方自治庁に派遣中。京都大大学院修了。

2019/06/15掲載

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