スキーとマウスガード 金メダルへの秘密兵器
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 私は、上毛かるたの「水上、谷川 スキーと登山」のみなかみ町に住んでいます。子どもの頃からスキーをしていて、現在は地元のスキークラブでスポーツ少年団のコーチをしています。そこで、あまり関係のなさそうなスキーと歯科の関係について書きたいと思います。

 スキーは、楽しいレジャーのイメージがありますが、競技スポーツとしてのスキーは、アルペンはスポーツ最速、ジャンプは最も遠くへ飛び、フリースタイルは最も高く舞い上がる競技です。そんな常に危険と向き合う競技スポーツなのです。

 私はトリノオリンピックから、モーグルスキーチームをサポートしています。チームは平昌オリンピックでメダルを獲得しました。サポートのきっかけは、トリノオリンピック前年のカナダ合宿で選手が脳振とうを起こし、現地の医師から、「ヘルメットとマウスガードを使用していたか?」と聞かれたことでした。

 当時からスキー競技のルールで脳振とうを起こした際の出場停止期間が設けられていました。そのことから選手の安全を守るためチームに依頼され、マウスガード作製を中心にサポートを始めました。

 実は、スキーとマウスガードは相性がよく、パフォーマンスに好影響を与える可能性もあります。マウスガードの使用の有無による身体の揺れについて調べたことがあります。バランスボールの上で、跳びはねたりできるような非常に優れたバランス能力を持ったスキー選手たちでも、マウスガードを使用すると、さらに揺れ幅が少なくなり、バランス能力を高める可能性があることが分かりました。

 また競技中に選手は咬(か)んでいるのかを調べるために、モーグルの国際大会で選手にセンサーを着けて滑ってもらいました。その結果、コブ斜面の滑走やジャンプの着地で咬んでいることが分かり、咬んでバランスを取りながら滑っていることが推測されました。

 そこで私たちは、コーチや選手たちと話し合い、ある工夫を加えたマウスガードを提供し、その後の世界選手権やオリンピックなどの成績から手ごたえを感じています。しかし、その工夫は北京オリンピックの金メダルのために、まだ秘密にさせていただきます。

 適切なマウスガードは、防護やパフォーマンスに好影響を与えるだけでなく、競技終了直後のインタビューにも着けたまま答えられるほど違和感もありません。このスポーツ歯科の分野は日本が世界の最先端を行っていると言っても過言ではなく、私たちが作ったマウスガードの使用は、メダル獲得の大きな武器になると考えています。

 2020年の夏、「えっ、こんな競技でも使っているの?」と、言うシーンが東京でも見られるかもしれません。ぜひ注目して見てください。



歯科医師 片野勝司 みなかみ町湯宿温泉

 【略歴】スポーツデンティスト。片野歯科医院長。日本レスリング協会スポーツ医科学委員会。全日本スキー連盟情報医科学部。県ラグビー協会。東京歯科大卒。

2019/06/27掲載

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