文化財ガイドの自戒 好感度を上げる発信力
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 旅は楽しいものであるが、いつも物足りないと感じるのは地元の人との交流がほとんどないことだ。旅先で話をするのは、ホテル、飲食店、みやげ物店、施設の受け付けの人か、タクシーの運転手さんだけ。話をしようにも、相手は忙しいし、地元の人とは限らない。

 道すがら、たまたま会った人と二言三言会話することはあっても、テレビの旅番組のように、普通の人が入れない場所で、特別な体験をするようなことはないのが現実だ。
 そのような中、地元のボランティアガイドは貴重な存在だ。ガイドブックやインターネットでは得られないような地域の情報を教えてくれる。

 何でも知っていて、土地勘や歴史観のないこちらの的外れな質問にも的確に答えてくれる、ありがたい存在だ。

 一方で、残念なガイドにあたることもある。その筆頭が、いつ話が終わるかわからない人だ。自分が知っていることをすべて話し切らないと説明が完結しない。以前、自分から説明時間を聞いておいて、20分の約束が1時間近くになったことがあった。

 旅行者は、時間が足りない。ここで20分、あそこで30分と計画を立てる。あわただしい旅程を立てる方が悪いのだが、せっかく行ったからにはあれもこれも見たいのが人情だ。ところがボランティアガイドは、1時間ないと説明できないと言う。

 私自身、外来者に地元の文化財の解説をすることがこれまで何度もあったが、かつて、ある団体が約束の時間に30分も遅れてきて、説明している最中に「時間がないから急いでくれ」と後方から声が掛かったことがある。失礼な話だが、立場を変えればいたしかたない。バスの帰着時間は決まっているのだ。

 このような問題の解決方法はガイド側が臨機応変な対応に努めるしかない。これだけはというものをいくつも用意しておくことが肝心で、たった10分のために、1日つぶす覚悟も必要だ。

 有名観光地のボランティアガイドは客の扱いに慣れている人が多い。知識の押し売りはしないし、要点を押さえた説明をしてくれる。反対なのが独りよがりな人だ。郷土愛にあふれ、自分の社会貢献を誇りにしていて、生きがいに感じている。しかし長い話を聞かされている方は困惑するばかりで、どちらがボランティアだかわからない。

 以前、ある大きな博物館でボランティアガイドが展示解説をしている様子をずっと見ていたことがある。聞いている方は端から見ても「もう十分」という態度ありありなのに、解説している方は一生懸命で、相手の気持ちに全く気づいていない。

 私も今度ガイドを頼まれたら、あまりしつこくならないようにしようと思う。「二度と来るかこんな所」と思われたら本末転倒だ。



太田市教委文化財課職員 菅間健司 太田市西矢島町

 【略歴】太田市教委文化財課長、教育部長などを務め2018年3月に退職。再任用職員として文化財の保護活用に努めている。高山彦九郎研究会会長。法政大社会学部卒。

2019/07/06掲載

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