高齢ドライバーの事故 免許返納後の未来図を
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 最近、高齢ドライバーによる交通事故のニュースを見かける機会が増えたように感じます。本県でも、昨年1月に前橋市内で高校生が被害者となる痛ましい事故が発生しました。

 2018年度の交通安全白書では、全体の交通事故死者数は近年減少傾向にあるものの、75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は、ほぼ横ばい状態です。結果的に、高齢者の事故が目立つ状況にあります。

 本県では、山間部や公共交通機関の乏しい地域では、近くに頼れる方がいないと、自動車なしでは生活自体が成り立たなくなるリスクを抱えます。そのため、高齢となり、多少不安があっても、運転を継続せざるを得ないと考える方も多いでしょう。

 しかし、自動車は鉄の塊であり、運転を誤ると一瞬にして凶器となります。高齢者の事故の多くは、アクセルとブレーキの踏み間違いです。認知症や加齢による判断能力の衰えにより事故は発生します。運転をしないこと以外に止めることはできません。

 17年3月に道路交通法が改正され、75歳以上の方が免許更新をする際は、認知症のおそれがある場合には、臨時の適性検査または公安委員会が指定した医師による診断書の提出が必要となりました。

 知人の指定医師から「正直に認知症の診断をすると免許の取り消し等となり、本人からひどく責められることがある」「強制的に免許を取り消すのであれば、免許がなくとも生活できるインフラを整備することが行政の役割ではないか」と伺ったことがあります。指定医師も真剣な対応が求められています。

 さて、弁護士は業務の中で交通事故案件を取り扱います。死亡事故の場合、無関係な第三者の人生を一瞬にして一方的に破壊してしまいます。それが高齢ドライバーによる場合には、事故前に免許返納のチャンスがあったのではないかと思われる案件もあり、いたたまれない気持ちになることがあります。

 弁護士の立場からすると、高齢期になり、本人や家族が少しでも不安を感じた場合には、運転免許を返納することを強くお勧めします。ご家族の皆さんが、高齢者の運転をやめさせるのに苦労している話をよく伺いますが、事故を起こしてからでは遅いのです。加害者は、刑事罰を受け、多額の賠償金を支払う義務を負います。罪を償ったとしても、破壊された第三者の人生は戻ってきません。

 交通事故は、免許を保有する全ての方々が当事者となり得ます。高齢ドライバーに限らず、安全運転を心掛けなければなりません。

 政府が推奨する地域共生社会を実現するためには、各自治体が、免許返納後も住み続けられる地域環境を整備することが求められます。皆で知恵を出し合いましょう。



弁護士 板橋俊幸 高崎市貝沢町

 【略歴】弁護士法人龍馬所属。群馬弁護士会高齢者・障害者支援センター副委員長。一般社団法人認知症予防&サポート研究所アンクル理事。埼玉県出身。早稲田大卒。

2019/07/20掲載

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