コラボレーション 出合い、共鳴し革新へ 
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 私の本職はジャズ・ピアニストだが、これまで多くの異業種とのコラボレーションの機会に恵まれてきた。2008年新国立劇場で上演された「リンゴの木の下で―昭和21年のジャズ」というお芝居では、プロデューサーの広井王子さんが駆け出しのプレーヤーだった私を音楽監督として起用してくれた。俳優さんたちに音楽指導したり、私自身はピアノを弾く小さな役をいただいたり、おそらく人生最初で最後の「台詞(せりふ)」まで頂戴するという貴重な体験をさせていただいた。

 この舞台で一緒に仕事をした大野裕明君からは、彼のお芝居の音楽を続けざまに担当させてもらい、随分たくさんのオリジナル楽曲を書いた。私の多くの曲は大野君とのコラボレーションから生まれた。今夏発売の新アルバム「YAKUMO」の主要なメロディーは、「怪談八雲噺(2010)」に際して作曲した。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)を知り、その世界観にひかれるきっかけになった。

 他にも朗読と音楽の融合にチャレンジしたり、ファッションショーの音楽を担当したりもした。クラシックの音楽家とのセッションも広い意味では異業種コラボレーションと言えるかもしれない。また現在私が主戦場としている「俺のフレンチ」での演奏も、食、サービスと音楽の融合を目指すという点では同じだ。

 そもそも多くの音楽が、踊り=ダンスと結び付いて発展して、ある種のジャンルとなる一定の法則があるようだ。クラシックでは、アルマンド、サラバンド、ジーグのような古典舞踊が音楽形式になった。20世紀にはアメリカではジャズが、ブラジルではサンバが、キューバではサルサが、アルゼンチンではタンゴが発展し、のちにダンスという文化的コンテクストを離れても音楽として自律的に享受されるようになった。

 新しい音楽は常に新しい文化とともに生まれる。ダンスだけでなく、ファッションだったり、広い意味の文学だったり、そうした価値観の総体から、そこにふさわしい音楽が生まれるのだ。それはまさに異業種のコラボレーションそのもの、伝統と現在がせめぎ合うダイナミックな現場である。

 私のやってきたことはそんな大仰なものではないが、その時々の状況に合わせて最適解を見つけるという意味では、新ジャンル誕生の現場の縮小形のようなものかもしれない。

 私は異業種コラボレーションが好きだし、性格的にも向いていると思っている。大切なのは、異なる文化への尊敬と寛容、新しい価値を生み出すためのチャレンジ精神と柔軟性である。これは何も音楽の世界だけではなく、どんな社会でも当てはまる。自分が十分に実践できているわけではないが、その精神は大切にしていきたい。



ジャズピアニスト 保坂修平 東京都足立区

 【略歴】渋川市観光大使。「俺のフレンチ」などを展開する「俺の株式会社」音楽部門首席ピアニスト。「タペストリーズ」などのCDを発表。渋川高―東京芸術大卒。

2019/07/26掲載

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