群馬の優れた運動環境 山行でできる健康管理
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 一般的に山の単独行は事故が生じたときに対処が難しくなることから避けるべきだと言われています。しかし、実際には単独行の登山者は少なくなく、増える傾向にさえあります。

 他の人と都合を合わせる必要がなく、その時その時の自分の体調や社会的都合に合わせて気兼ねなく予定を変更できることは現代人にとって大きな魅力であり、複数人で情報収集に努めなくてもネット検索で直前の目的地の状況がかなり正確にわかることも単独行動の不安感を少なくしていると考えられます。

 厳しい条件の山に単独で向かうことは今でも勧められませんが、近郊の何度も通って状況を熟知している山に、留守宅や登山口にしっかりと行程等を連絡しておくのであれば、単独行にはメリットも多いと言えるでしょう。

 実際、群馬県の郊外エクササイズスポットとして人気のある榛名山系水沢山、赤城山系鍋割山、桐生山系吾妻山などでは、黙々とトレーニング的登山に取り組む単独行の人々にたくさん出会います。1人で歩き慣れた近郊の山々を歩くと、坂道を上り下りする時の体への影響が非常によくわかります。

 グループで歩くと世間話に花が咲き、自身の体の状況への関心が薄れてしまいます。また、他のメンバーの歩行速度を気にしてしまい、自分が最も心地よいペースで歩くことに気兼ねしてしまいがちで、各自が自分の能力を正しく評価し、その経時的推移に着目して健康管理に生かすことが難しくなります。

 もし通い慣れた行程で「ちょっとつらいな」、「駄目かな」と思ったら、ペースを落とすなどして運動の強度を調整し、同時に体調に変化を生じた原因を考えてみましょう。特段の原因が思い当たらず、「明らかに弱っているぞ」と思われたら、迷わず医療機関を受診して、異常の内容を伝えることで病気の早期診断につながるかもしれません。

 病院で実施する負荷心電図検査は、5%程度の傾斜をつけたベルトの上を速度を調節しながら歩いてもらうものですが、心電図や血圧計を装着して実施することで心臓の予備力の評価や病気の早期発見に役立てています。山歩きでの健康チェックはちょうどこの検査を自分自身でやっていることになります。

 各山行ごとに測定値や疲労度、健康上の気づいたことを記録しておくことも重要です。記入した記録紙は山域別にファイルし、何回分かたまったら、測定値ごとに推移をグラフ化することで、自身の健康度の変化をじっくり眺めることができるでしょう。

 昨年度、日本山岳会群馬支部で実施した「健康登山塾」では、集団でこうした作業を行い、参加者に群馬県の豊かな自然環境を健康管理に生かすこつについて体験していただくことができました。



群馬大大学院医学系研究科教授 斎藤繁 前橋市古市町

 【略歴】日本山岳会群馬支部が主催する「健康登山塾」の講師を務める。著書に「病気に負けない健康登山」(山と渓谷社)など。群馬大大学院医学系研究科修了。

2019/07/29掲載

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