仕事に全力 厳しい言葉に救われて
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 シャンソン・カンツォーネを歌うようになってから、徐々に活動の場を広げ、著名な歌手との共演もありました。

 大きなホールでのコンサートもありますが、ライブハウスでの演奏などが活動の中心です。

 それ以外には、比較的小さな老人ホームやデイサービスセンターでの訪問演奏も仕事として行うことがあります。他の歌手や伴奏者と共に訪問することもあれば、1人で弾き語りの演奏をすることもあります。

 小さい会場ですと、20人にも満たないミニコンサートもあります。もちろん、大観衆の前で歌う時の方が、気持ちの高まりが大きいのは確かなのですが、意識して、小規模な会場での演奏には、手を抜かないようにしています。

 それは、日々の小さなコンサートを全力でこなすことを続けることが、年に数回、あるいは数年に1回の大きな舞台に臨んだ時のプレッシャーから、自分を支えてくれるように思うからです。もちろん、全力と言っても、小さい会場でうるさいほどの大声を張り上げることではなくて、「取り組み・心構え」の問題です。

 以前、ショーダンサーをやっていた頃、お店での集客力アップに伴って、テレビ出演や雑誌の取材の仕事も多くいただくようになり、自分の成長を過大評価して慢心が生じていた時期がありました。

 その頃、店長に厳しくも温かい言葉をいただきました。「テレビや雑誌に出るようになっても、お前の舞台でのダンスはまだまだだ! 勘違いするなよ!」

 最初は、「どこまで厳しい人なんだろう」と思ったのですが、日々の舞台でのパフォーマンスをVTRで確認してみると、自分の思った動きになっておらず、以前できていたことすら崩れている箇所も多かったのです。

 もちろん、実力のある他のダンサーからは大きく水をあけられているのは明白でした。少しばかり、テレビに出してもらって喜んでいた自分がとても恥ずかしく思えました。

 テレビ出演や雑誌の取材の後に、お客さまに温かい言葉をかけていただけるのは確かにありがたいこと。そして、それを素直に喜ぶことも大切なことなのですが、それによって自分が大きな力を得たように勘違いしているようでは、日々の精進を鈍らせて、その後の成長はありません。

 現実を直視して、厳しいことを言ってくれる人がそばにいてくれることが、こんなにありがたいと思ったことはありませんでした。苦言を呈してくれる人を遠ざけずに、耳を傾けることが、とても大切だと感じました。

 その後、「おだてられても舞い上がらない。少しばかりけなされても落ち込まない」ようになっていったように思います。



シャンソン・カンツォーネ歌手 村上リサ 東京都板橋区

 【略歴】県内公立中で音楽教諭をしながら、草津国際音楽アカデミーでE・ヘフリガー氏に師事。ショーダンサーを経て、歌手として活動。東吾妻町出身。東京音楽大卒。

2019/8/1掲載

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