民主主義の深化へ 絶えず地方分権改革を
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 令和元年の今年は平成時代回顧が盛んに行われ、地方自治や地方分権は平成時代の重要なテーマであった。官僚制度や行政機構を政治改革の一環として地方分権の機運が高まり1999年には「地方分権一括法」が成立した。

 私は地方自治法施行50周年記念論文「21世紀の地方自治」最優秀賞や「私の地方分権論」で特別賞を受賞した。今回はそれらの考えを述べたい。

 戦後、日本国憲法が成立し、近代史で画期的な地方自治が形式的には確立され、地方分権の可能性が生まれた。しかし、地方自治は名ばかりで、地方共同体の実質的な自治は必ずしも実施されておらず、建前と実体の「ズレ」があって、このズレを解決する動きが地方分権である。

 地方分権は補完性の原則による「地方ができることは地方がやり、地方ができないことは国がやる」ことであり、中央・地方を通じた政府の仕事のやり方を抜本的に見直し、構造をつくり変えることである。

 地方政府は自らの裁量で自由に運営し、それによって特色ある地方が生まれる。住民と行政が対等の立場で協力しあい、双方が責任を持つことによって、生き生きと活動できる社会を創造していく。

 自治意識の醸成には長期間要するが、狭域自治体を育成し、権限を与え、住民が運営する。また国からの補助金が「受益」と「負担」を連動させていなかったが、住民は、感情や感性を理性に高め、合理的な判断を下すようになり、真の民主主義が生まれる。

 地方分権は、中央政府の権限をできるだけ地方に委譲し、中央と地方との間に適切なバランスをつくり出すことによって権力の集中を阻もうとする。歴史的には、国が危機的な状況では、中央集権体制になり、江戸時代は封建的分権体制、明治時代は官僚的中央集権体制に変わり、戦後もその体制が存続している。中央集権か、地方分権かは、どちらかがすべて優れるものではなく、行政が常に当面する「能率と民主化」に置き換えられる。

 現在、国では東京一極集中を是正して地方に活力をもたらそうと「地方創生」を掲げ、約5年が経過するが、具体的成果は乏しい。「機関委任事務の廃止」や補助金の見直しにより、国と地方の関係が「対等・協力」の関係に変わるはずだったが、その実現の道は険しく、経済政策優先の下に、地方分権の声はトーンダウンしている。

 中央政府は経済・社会の変化により、中央集権化の方向に進む。そのため地方分権の方向に引き戻す改革と努力が常に必要である。地方自治は民主主義の訓練という古典的利点だけでなく、国家に柔構造的、多元的、安定性が深められる。民主主義の深化の発展、地方分権の実現には、国民の発言、行動や自覚が重要である。



元群馬高専講師・ゲストハウス運営 生形健司 高崎市東町

 【略歴】ゲストハウス運営の傍ら、NSM資格審査委員、ウイングユー社長を務める。技術士。元東京都職員、群馬県職員、群馬高専講師。群馬高専―慶応大法学部卒。

2019/08/05掲載

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