客貨混載事業 地方のバスに可能性
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 先日、恒例の夏季合同ゼミ合宿を終えた。本年度は新たにゼミに加わった2年生のほか3年生、および4年生約30人が参加した。後期から各学年でゼミが始まるが、学年間の横のつながりはもちろん、学年を超えた縦のつながりも大事にしてほしいと思う。

 さて、本ゼミの合宿は会議室での座学だけでなく、交通の現場で働く方々のお話を伺ったり、現場視察などを通してさまざまな交通問題に対する理解を深めることも目標としている。今回は関越交通の佐藤俊也社長をはじめ、3人のご担当者にご来校いただき、同社がヤマト運輸と共同で展開する「客貨(きゃっか)混載事業」についてお話を伺った。

 客貨混載事業とは、一般の乗合バスに貨物を積載し、旅客と貨物を同時に輸送するという事業で、現在、沼田~片品エリアと渋川~伊香保温泉エリアで実施されている。

 前者はヤマト運輸沼田支店で利根町地区・片品地区行きの荷物をバスに積み込み、その後、最寄りのバス停で待機するヤマト運輸のトラックに荷物を渡し、各家庭や事業所に荷物を配送する。

 後者は伊香保温泉の宿泊者を対象とした事業で、渋川駅前プラザで宿泊者から預かった荷物を伊香保温泉行きのバスに積み、終点で待機しているトラックに荷物を渡し、当日夕方までに各旅館に荷物を配送する。

 講演後、沼田の現場へ行き、荷物の積載作業を視察させていただいた。35度を超える気温のなか、バスのドライバーとヤマト運輸の従業員が車内で待機するお客さまに支障をきたさぬよう、見事な連携で作業する姿に感銘を受けた。

 客貨混載事業は「貨客(かきゃく)混載事業」とも呼ばれ、どちらかと言えば後者で呼ばれることの方が多いが、同社はあくまでお客さまが最優先という理念なので、あえて客貨と呼んでいるのだと感じた。

 ところで、客貨混載事業は、持込荷物の種類や量が制限され、かつ適正量を安定的に確保しなければならないので、同社のように事業が本格化したケースはあまり多くない。ただ、いったん事業が軌道に乗れば、トラックドライバーの働き方改革やバス路線の生産性向上に結びつくし、地産品輸送等にこれを応用すれば地域活性化に貢献できる可能性がある。

 同社では今年6月から朝、片品で収穫した高原野菜をバスで沼田支店に輸送し、銀座東武ホテルまで配送するという事業を開始している。この野菜は翌日朝のバイキングに並び、宿泊客から大変好評を得ている。今後はこうした事業にも着手し、群馬を全国だけでなく世界に知っていただく機会が増えてほしいと願っている。

 最後になるが、今回はこうした貴重な経験をいただいた関越交通の皆さまに本紙面を借りて改めて厚く御礼申し上げたい。



高崎経済大地域政策学部准教授 小熊仁 さいたま市浦和区

 【略歴】運輸調査局副主任研究員や金沢大助教を経て、2017年4月から現職。福島県会津若松市出身。中央大卒。同大大学院経済学研究科博士課程修了。

2019/8/16掲載

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