地名は誰のものか 地元アクセントの正体
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 バスや電車、ショッピングセンターの自動放送を聞くと、地名を地元とは違うアクセントで発音していて、違和感を覚えることがよくある。

 私の地元「太田」を低高高(平板型)のアクセントで言われると、いつも「違う! おおた(高低低・頭高型)!」と心の中で叫んでしまう。

 市内の大型ショッピングセンターはオープン当初は平板型であったものが、いつしか地元アクセントに変わっていた。苦情がたくさんあったのだろう。もっとも、従業員の生声放送は初めから地元アクセントであったが。

 日本語のアクセントは音程の高低で言葉の意味を区別する。「雨」と「飴(あめ)」、「箸」と「橋」ではアクセントが違うが、厄介なことに、東京と大阪とでは全く逆になる。アクセントを区別しない地域もある。足利周辺を除く栃木や茨城は無アクセント地域だ。

 アクセントの地域区分は、大きく「東京式」「京阪式」「無アクセント」等に分けられるが、太田市以西の群馬県は「中輪東京式アクセント」といい、東京共通語と同じだ。しかし、地名のアクセントは違うものが結構多い。

 「前橋」「伊勢崎」「館林」も、テレビの天気ニュースで頻繁に出てくる地名だが、地元と違うアクセントで発音される。毎回、違和感のある発音を聞かされる地元の人の気持ちはいかばかりかとお察しする。気象庁のアメダスがない太田は天気ニュースに出ることがない分、「心の叫び」が少なくて済んでいるようだ。

 埼玉県の「熊谷」「深谷」「本庄」も地元とは異なるアクセントで発音されている。

 このような中、深谷市では、住民の要望により、JR深谷駅の「ふかや」のアナウンスが頭高型から平板型に変えられたという(「渋谷」と同じアクセントになったことになる)。本庄市では、公募した市のPRビデオで「本庄」のアクセントをテーマとした作品がグランプリを受賞している。「ほんじょう」の連呼が耳に残る作品だ。

 NHKの放送文化研究所から、放送で使用する言葉のアクセントを収録した『NHK日本語発音アクセント新辞典』が刊行されている。近年実施された大改訂の目玉は地名の充実と「地元放送局アクセント」だそうだ。

 元々、NHKでは地域放送の場合、地元の地名は地元のアクセントで発音してもよいことになっていたが、地域発の全国放送でもその使用が許容される場合があるとのことだ。全国の放送局に地元視聴者からの要望があったことを受けての方向転換だ。

 共同意識を育む地名はその地に住む人のものであり、その発音も地名と一体のものだ。異なるアクセントを使えばすぐよその人とわかる。深く慣れ親しんだものを改変されれば不快に感じる。それが「違和感」につながっているのだと思う。



太田市教委文化財課職員 菅間健司 太田市西矢島町

 【略歴】太田市教委文化財課長、教育部長などを務め2018年3月に退職。再任用職員として文化財の保護活用に努めている。高山彦九郎研究会会長。法政大社会学部卒。
 
2019/08/29掲載

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