「こころ」と「からだ」 「つながり」が自殺防ぐ
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 警察庁の自殺統計によれば、日本の自殺者は1998年以降3万人を超え、2006年には自殺対策基本法が制定され、個人の問題から社会で向きあう問題とされました。12年に15年ぶりに3万人を下回りましたが、18年でも2万840人の自殺者がいます。

 自殺者を減らすには何をすべきなのか考える上で、コミュニティーモデルと医学モデルという視点があります。自殺はある日突然起こるものではなく、自殺に至るプロセスが存在すると言われています。また、自殺時には約90%に何らかの精神科診断がつく状態であったと報告されています。

 つまり、健康問題や経済・社会問題、家庭問題、勤務問題、男女問題、学校問題等がきっかけとなり、その後のサポート不足等(コミュニティーモデル)が原因でうつ状態から精神疾患を患い自殺に至ります。しかし、上記のようなライフイベントがあった方が全員、自殺するわけではなく、自殺に至る精神疾患に対する対応(医学モデル)から行うことが効果的であると考えられています。

 では、医学モデルとしてできることは何でしょうか? 私が携わる身体救急医療では、まずは、自殺企図後の身体的な面で関わることが主となります。そのため、救命後の自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐことが最も重要となります。

 それには、身体的な治療と並行して精神的な診察や治療を専門科である精神科医に依頼することが重要です。つまり、救急医療と精神医療の連携です。『からだ』を診る者と『こころ』を診る者が協力して自殺未遂者の対応を考えなくてはなりません。

 この連携は、すき間があってはなりません。自殺企図者は希死念慮を残していることが多く、身体的な問題が解決しても精神的な問題を抱えていることがほとんどです。この問題がクリアされなければ自殺企図を繰り返すことになります。

 次に考えなくてはならないのが、自殺企図に至った原因です。原因となりうるさまざまのライフイベントやサポートの不足などを取り除く必要があります。これには、精神科医師だけでなく、看護師やメディカルソーシャルワーカー、児童相談所や保健所などの行政、弁護士、搬送に関わる消防や警察など多くの職種が関わる必要があります。

 7月30日に、群馬県主催で中北毛地域自殺未遂者支援ネットワーク研修会が開かれ、私も参加させていただきました。自殺という社会問題に対して、医療者としてできることを考え、各職種における関わり方を共有する良い機会となりました。

 『こころ』と『からだ』はつながっています。そこに関わるいろいろな方々がつながる必要を強く感じています。



前橋赤十字病院高度救命救急センター長 中村光伸 前橋市川原町

 【略歴】群馬大医学部附属病院脳神経外科医などを経て、2015年4月から現職。日本赤十字社県支部災害医療コーディネーターも務める。群馬大医学部卒。
 
2019/09/05掲載

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